《田村千秋脱退についての私見》
「なんでやねん!」 その事実を知ったとき、それだけしか私の口から出てくる言葉はなかった。
制服向上委員会2期生・田村千秋。SKiの中核ユニットである、[寿隊]隊長 兼[SKi-P]のリーダーであった彼女が、この5月 SKiを自ら脱退したという事実である。「えぇかげんにせぇよ…」 私は、この決定を下したスタッフに対し、怒りと失望の色を隠せなかった。愚連の乱闘,奥山みかの脱退劇に、吉田未来の退会,白石桃子の恨みの卒業…。SKiには、これまでにも様々なトラブルがあり、その度に頭の痛い思いをしたが、今回ほど呆れ果てたことはなかった。
「せめて、跡を継ぐメンバーの目処が立つまででも、引き留めることすらも出来なかったのかよ。」 聞いた話によると、中野社長は必死に慰留したそうだが(そりゃ、そーだわなぁ)、結局 彼女の意志が固く、このような形での脱退になったという。しかし、冷静になって考えてみると、SKiの2大ユニットの長でありながら、無責任にもそれを放り出し、SKiを去っていった田村千秋のほうが悪く思えてくる。でも私は、彼女に対しては全くといっていいほど怒っていない。いゃ、それどころか“よくやった”という気持ちにすらなっている。何故だろう?
統一された制服向上委員会のメンバーの中で、彼女だけが異彩を放っていた。〔元気・うるさい・飛んでいる〕キャラで、比較的おとなしめのキャラクターが揃うグループ全体を、いわばスパイス役として、引き締めるかのような存在であった。そして、SKi 2期生として、スタッフから最も重要なメンバーとして位置づけられ、歌に,ダンスに,お笑いにと 大いに活躍していた。けれども、いわゆる“だめなひと”たちの評価は、決して高くはなかった。「SKiのキー・マンであることは 認めるけれど、やっぱりトモトモ[篠原智子]や ミィ2[松本美雪]の方がいいや。」 おとなしい女の子好みのファンが大多数を占める環境から、そういった点で遅れをとっていたのである。
かくいう私も、全く同じように思っていた。「『ペンギン』で見るように、確かにおもろい奴だけど、それだけで、なんでいろんなユニットに参加しているんだ?」と言ったこともある。そんな認識を改めたのは、昨年の秋に行なわれた、テレビ金沢の公開録画である。諸岡・松田 目当てだった私は、ほとんど期待せずに田村(の写真)を撮ったのだが、驚かされた。かつての早坂好恵を思わせる〔はっちゃきぶり〕の中に、ほんの一瞬 大人びた女の表情を感じた。間奏に入る。すぅーっと長い髪をなびかせて、ターンする田村千秋。その瞬間、観客に投げた視線は、まさしく“女”であった。この落差に私は、彼女の魅力に初めて気づかされ、同時に芸能人として必要な〔人を楽しませる〕資質を見たのである。
彼女は、SKiのメンバーとして、非常に上昇志向が強かったと聞く。昨年秋のIJF2で、白石桃子と一緒に Melodyの『運命'95』を、ちらっと歌ってみせ、のちの《SKiの紅白歌合戦》ではソロで歌った、という話を聞いて、私は「本当にアイドルになりたい娘なんだなぁ。今どき、嬉しいじゃないかよ。」と、感心したものであった。重要なユニットである[寿隊],[SKi-P]のリーダーとなり、インディーズ・アイドルの雄、制服向上委員会の柱として、大いなる活躍を期待された。
私は、彼女ならSKi-Pを足掛かりに制服向上委員会を、インディーズから出て来た、メジャーなアイドルにも負けないグループに出来るだろうと思っていた。“だめなひと”もSKiのスタッフもそう思っていた。だが、彼女自身の意識は違っていた。「私の目指すものは、“こまば”では見つけられない…。」 本当にアイドルに憧れ、そして目指してきた。田村,いぇ 西村千秋という女の子は、こまばエミナースの500人程度の観客では、決して満足することは出来なかったのである。「私は、もっともっと大きな舞台に立ちたい。しかし、アイドルとして輝くチャンス(時間)は短い。そのためには、今すぐにでも、こまばを飛び出しても構わない。」 それが、彼女自身の出した答えであった。
SKiを捨てて、身勝手に飛び出した、彼女の行動そのものは許せない。許せないのだが、私は、より一層の高みを目指す彼女を、決して責めることは出来ない。その気持ちは、痛いくらいによく分かるし、それが夢を売るアイドルの業であると思うからである。大多数の“だめなひと”も、心の中ではきっとそう思っていることであろう。だから、あえて私は「よくやった!」といって、彼女を送ってあげたい。もう、『ペンギン』を聴くことが出来ないのは、寂しい。だが私は、別の形で〔はっちゃき千秋〕に再び出逢えることを信じている…。
[大阪府/Be-Wave]
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