東方 見.聞.録.


Album〈ワースト〉/制服向上委員会

 6月1日に、制服向上委員会の3枚目のアルバム『ワースト』が発売された。ジャケット写真は、片方脱げかけた靴下がかわいらしい しのさん[篠原智子]が、今時 とんと見かけなくなったロン・スカ(ロング・スカート)のヤンキー女子高生に捕まっているところに、カメラアングルのせいで 5頭身になってしまった圭子警官が、警棒を振り回しピストルで威嚇射撃をしている。この警棒、現在使われている 折りたたみ式ロッドではなく、昔の木製の警棒である。
 ピストルも、服の内側に隠せるタイプではなく、外にぶら下げられており、制服自体が現在のアメリカンポリス・タイプでなく、マンガ〈天才バカボン〉に出てくる、本官さんの着ているやつである。

 このジャケ写は、周囲からよってたかってイジメられ、挙げ句の果てに自殺してしまう、今の陰湿なイジメではなく、少年非行が問題となり、校内暴力で警官隊が動いた時代、ちょうど〈積木くずし〉や〈金八先生〉にあったような、イジメの風景であります。それは、私も含めたSKiファン諸兄の多くが、学生時代を過ごした時代でもあるのです。

 曲の方に移ります。『制服宣言』『恋のインビテーション』『ともだち』と続くナンバーに、「あぁこれで、エミナースで聴いた あの曲が部屋でも聴けるゾ。」なんて、私のように期待すると、Newアレンジの聞きなれないイントロが流れてきて、おそらく当惑してしまうだろう。それも、コンサートに足を運んだ回数の多い人ほど、当然 聞こえてくるはずの音とのギャップに戸惑うことだろう。逆に、最近ファンになった(not「今、来たばっかり!」)SKiビギナーは、現行メンバーによって作られたこのアルバムのはうが、違和感が無いかもしれない。そういう方は 歌詞カードを見て、歌を2,3曲覚えてしまうと、SKiの魅力が理解しやすいので、おススメです。SKiの達人の方々も、コンサート会場では聞き取りにくい歌詞などもありますので、改めて 詞とその意味を確認してみるのも良いかもしれません。

 歌の方はというと、なんとなく違和感が感じられる。なるべく、先入観をなくして聴いているつもりなのだが、やはり違和感は禁じえない。これはどうやら、私の持っているイメージ云々ではなくて、曲の強烈なアレンジに歌い手がついて行けないのではなかろうか。どこか、歌い方にぎこちなさを感じるのである。その点、吉成さんの歌っている曲は、さすがにSKiの曲をよく知って歌っているという印象が強いのだが、やはり3期生は歌い方に“とまどい(c)”が感じられるのである。

 けれどもそこが、私がこのアルバムの最大の聴きどころだと感じていることであります。あのイントロだけじゃ、何の曲だか分からないアレンジのおかげで、1期生や2期生のマネではない、“3期生の歌”が聴けるのである。きっと、吉成さんたちは、すんなりワン・テイクでOKをもらって、ビーフストロガノフなんぞを こさえて(作って)いる傍らで、3期生たちはスタッフの突きつける難しい注文を、けなげに,ひたむきに,苦心しながら、何とかそれを表現しようと必死になって録音したのがこのアルバムなのだ、と思うと涙なしでは聴けません(大袈裟すぎか…)。それによって吉成さんが、すでに吉成圭子のスタイルを持っていることや、松田ゆかりさんが、マイペースで安定した歌い方をしているのを、再認識することができるのです。

 このアルバムは、細かなところを聴いていくと、実に面白いアルバムであります。オリジナルの曲と聴き比べるも良し、単に純粋な音楽として聴くのも良し、その人の自由です。「『制服宣言』は、こんなんじゃないんだよ。」とか、「俺は、浅野みゆきの『恋は数学』が聴きてぇんだよ。 Please come back! みゆきぃぃぃ…」 といった、後ろ向きの楽しみ方も間違いではありません。ただ、私はあまり薦めませんけどね。

[群馬県/知恵之輪士]



 “名は、なんとかを表す”って言うが…(苦笑)。

 アレンジされているってことで、期待よりも不安を先に感じたことは言うまでもない。そして、それは的中した。〈アイドル・ジャパン・レコード〉なるものを結社している以上、[制服向上委員会]という名でリリースしている、過去のCD・ビデオ(by ポニーキャニオン&キティレコード)には、すべて版権の問題が絡んでくる。すでに廃盤になっている『制服宣言』などは、原曲に近い曲での発売が難しいことは予想がつく。故の“アレンジ版”なら納得せざるを得ない部分もある。が、『制服宣言』には愕然とした。音が軽い。原曲と同じでは、アレンジとは言わない。とはいえ、原曲からは程遠い。この曲は、制服向上委員会のデビュー曲である。私自身に、音楽の知識はないに等しい。

 そんな私が言うのも変だが、もっとしっかりしたアレンジが出来なかったのだろうか? 少し残念だ。
 そして、初のCD化なのにアレンジ版という『同世代の少女たちへ』。裕紀子ちゃんの、少々緊張気味の初々しい歌声も良いのだが、その前に原曲をCD化して欲しかった。この曲は、コンサートでも楽しみにしていた曲の一つ。

 サンバ調(?)で、曲の雰囲気が変わってしまった。アレンジによって曲の雰囲気が変わったことは、収録されている10曲全てに対して言えることだけど、他の曲の原曲のソースは、手元に残っている。アレンジ版が気に入らなければ、原曲を聴けばいいわけで、その点『同世代の少女たちへ』などは、それがない。過去のコミティ・ビデオとかだと、収録されているものもあるのかも知れないが…。

 どちらにせよ、ほとんどの曲が同じようなアレンジ。個々の曲でさえ、言いたいことは山ほどあるのに、アルバムも後半に差しかかれば、さすがに飽きてくる。まさに〈ワースト〉。タイトルどおりの内容の作品を作るのだったら、ぜひ〈ベスト〉とでも名付けてリリースして欲しい。
 ここまで書いても、ぜんぜん誉めてない(苦笑)。敢えて書くなら、「3期生(この場合、ほぼ固有名詞になるのか?)の声が確認できた。」ってことだろうか。

 もう一つ、原曲を知らない人が聴けば、“それなりに”聴けるアルバムなのかも知れない ってことも付け加えておきたい。

[論説委員■まる井]


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