《我が心の、[のぞみー]》
近頃、『恋の秘密』の「♪ のぞみも、きらめく〜」に合わせての「あきやまー!」コールも、すっかり定着してきた感があるが、正直言って、かつて秋山 望のファンであった私などは、これを聞く度に複雑な気分になる。と、いうより、このコールをやっている人の大半は、おそらく実際には秋山を見ていないのだろうし、そのような人達によって、あのキレイだった[のぞみー]が単なるギャグのネタにされているのだと思うと、何だかとても辛くなってくる。まぁ、せっかく盛り上がっている客席に向かって、私ごときが とやかく言うことも無いのかも知れないが…。
秋山 望が、SKiから去ってもう3年。今や“伝説の人”となってしまっている彼女であるが、これまでミニコミの中で語られることは、ほとんど無かった。それもそのはず、多くのSKiミニコミが創刊される以前に、彼女は脱会してしまっているのだ。
そんな訳で、これから記すのは、おそらくSKiミニコミ史上でも極めて珍しい、【秋山 望レビュー】である。現在のSKiファンの中には、「彼女の写真さえも、見たことが無い」という方も少なくないだろうから、簡単に彼女のSKiでの活動実績と、プロフィールを紹介しておこう。
[秋山 望]が在籍していたのは、1992年12月から翌年7月までの約8か月間。
SKiが4年も続いた今となっては、在籍期間が短かったメンバーの部類に入ってしまうが、当時としては、吉成圭子,高瀬あやの(現:ひふみかおり)と並ぶ最年長組で、また同時にリード・ボーカルを取ることが多い、中心メンバーのひとりであった。
[のぞみー]の愛称で親しまれた彼女は、入会当時20歳、メンバー中 唯一の大学生。身長163pで色白・痩せ型。
髪はセミロングで、その目はいつも笑っていて、眉も愛敬のある“ハの字”、“優しいお姉さん”という感じのする人だった。その美貌はバツグンで、初期からのファンの中には、今でも「歴代メンバー中で、いちばんの美女だった」と、考えている人も多い。のぞみーは、いつも微笑んでいた。と、いうより、「際限なく笑っていた」と言ったほうが、確かかもしれない。
彼女は話すときも、笑いながら話す。何がそんなに面白いのかと思うくらいである。それを活字にしてみると、こんな具合だ…。「いつもステージや、あと雨が降っているのにキャンペーンをわざわざ観に来てくれるみなさん、どうもありが とうございます。これからも頑張りますので、制服向上委員会を応援してくださいね。うふふふふふふふふあははははは…。もっと? …いま私は、ちょっと学校のほうが、試験とかあって大変なんですけど、7月のステージは、 うふふふふ… 23日は出れなくて、あはははははは… 24日と25日にそのぶん頑張ります。 で、キーボードも今回 やろうと思っているので、みなさん観に来てくださいね。 あはははははは…、いいですか?」
また、同じ頃に発売された〈私の初恋〉というテープにも、彼女は登場している。それによると、「(好きだったのは、)ひとつ年上の男の子だったんですけど、(中略)引っ越すことになっちゃって、それから全然会えなくなっちゃったんですけど、結構すぐ忘れちゃいました。あはははははは…。」ということである。
このほか、93年6月に出た、〈プロフィール一覧〉のコメントも興味深い。「Q.何をしている時が、いちばん自分らしいと感じますか? → A.笑っている時」
「Q.占いを信じますか? → A.いい結果なら信じるけど、良くない時は、忘れるようにしている。」…一体、何という性格なんだろう(笑)。
万事、この調子の彼女は、とにかく笑いさえすれば、すべてそれで済むと思っていたようだった。彼女は、ステージでのフリとかも、ものすごくテキトーだ。「大体、こんなもん」という感じで踊って、失敗しても「あっ、間違えちゃった! あははははははははははは…。」で、終わり。“努力”とか“血と汗と涙”とか“根性”とか、そんなものには、全く無縁という感じだった。でも不思議と、見ていて不快感は無かったし、こちらまで楽しくなってくるようなところがあった。彼女を見続けるうち、私自身変わってきた部分がふたつある。ひとつは、それまでの私は、「ヘラヘラしている、テキトーな奴」など大嫌いだったのに、のぞみーを見て以来、「あ、こーゆーのもイイなぁ」と思えるようになったこと。もうひとつは、それまで常々「妹が欲しかった…(←私は、男3人兄弟の末っ子だった)」と考えていた私が、「[のぞみー]みたいなタイプなら、姉ちゃんも良いなぁ」と思えるようになってきたことである。(別に、いまさら考えても どーにもならないことであるが…)
彼女のような女性は、学校とかにはいないほうがいい。クラスやサークルにいると、奪い合いになりそうだし(笑)。
そのくせ本人は、カッコイイ先輩あたりと、チャッカリくっついてしまいそうな気がする。やはり、“近所のキレイなお姉さん”とか“ウチにいる、優しい姉ちゃん”なんてポジションが、ふさわしいのではないかと思う。ちょっとばかり恥ずかしい話だが、私は時々、そんな出逢いを夢想したりすることがある。私にとっての“理想のお姉さん像”は、きっといつまでも、心の中で[のぞみー] とともに在り続けていくのだろう。彼女は、初期SKiのガチガチに管理されたステージ形態が、完全に崩れる以前に脱退してしまっている。だから、本音を聞くことも、その素顔をうかがい知ることも、ほとんど出来ないままで終わってしまった。とても、残念な気がする。
でも、その一方では、美しいイメージだけを残して、去ってくれたのだから、これで良かったのかも知れない、とも思えてくる。あの、脳天気なまでの明るさと笑顔は、初期のSKiにこそ似つかわしいものであったし、深いファンたちにとっても、大切な思い出となっているに違いないからだ。わずかな時間ではあるが、[のぞみー] に出逢えたことを、とても幸運に思う。<P.S.> この原稿を書き終えたあと、山手線の“イスなし電車{編集部注:収納式座席の10号車のこと}”に乗って、ドア上についている液晶テレビで、〈JR東日本からのお知らせ〉を見ていると、突然のぞみーが出てきたので、ビックリした。〔軽井沢・草津フリーきっぷ〕のPRだったが、相変わらず“ハの字”眉の優しげな顔で、馬の顔を撫でたりしていた。雑誌以外で、のぞみーを見たのは久しぶりだったし、何だかとっても懐かしかった。
[写真提供:兵庫県/三枝(みつえだ)さん, 文:東京都/桂木 明]
はみだしKS3
【10月1日は、「国際音楽の日」】
先日、近くの郵便局へ行ったら、ピアノの鍵盤とト音記号をデザインした切手が発売されているのを見つけた。 そうか!“松田ゆかりさんのファースト・アルバム発売を記念 して”、今年から10月1日は「国際音楽の日」になったのか…(愚)。
[群馬県/知恵之輪士]
[ vol.11目次 ]