チャムと、空も飛べるはず…。

[さよなら・りょんりょん 特集]


天然ボケを忘れずに… 〜片桐陵子〜

 8月25日、《真夏の祭典vol.4》も大詰めを迎え、ラストはいつもの通り『エピローグ』だった。
 「SKiと過ごした夏もこれで終わりだなぁ。本当にいろんなことがあったなぁ。」と、改めてこの夏を回想していると、曲の間奏で晴天のヘキレキのような出来事が起きた。なんと、片桐陵子ちゃんが今日で最後だということが明らかになったのだ。5月のちぁきの時もそうだったけど、あまりの突然のことに、私は言葉を失ってしまった。「またか」という思いだったけど、この「またか」は、何度起きても大きなショックになる。

片桐陵子  陵子ちゃんは、今から1年前の《真夏の祭典vol.3 SKi世界一周23時間の旅》の3日目、8月26日の夜の部に初登場した。長い黒髪、つぶらな瞳、色の白さ、いかにもアイドルファンが好みそうなタイプの女の子だった。
 しかし、そういう外見からは想像もつかなかったが、とても面白い子で、公開生徒総会などで 見せるボケは、他のどのメンバーにもない個性だった。小林久子ちゃんとはとても息が合っていて、2人の会話は本当に楽しかった。《真夏の祭典vol.4》で披露した[陵助・久夫]の漫才は、あれが最初で最後になってしまうとは…。そうだと知っていれば、もっときちんと見ていたのに、と後悔しても、もう遅い。
 思うに、彼女の魅力は、いかにもアイドルらしいルックスと、アイドルよりもお笑い向きのような内面という、相反する要素が共存しているところにあったと思う。
 もう1つ忘れてはならないのが、飼い猫の[チャム]の存在で、今やSKiファンでは知らない人がいないほど有名になってしまった。そういえば、彼女自身もなんとなく猫っぽい雰囲気を漂わせているように思うのは、私だけだろうか。

 彼女は、本当に不思議な女の子だった。まじめにやっているのか、受けを狙ってやっているのか、その辺の境目が全くわからない。こういう子は、日本中捜しても滅多にいないだろう。SKiにとっても、グループにバリエーションをつけるという意味では、貴重な存在だったから、本当に残念でならない。まだ高2の17歳、十分にやっていける年齢なのに、彼女はSKiを辞めてしまった。
 辞めた理由をいまさら詮索しても仕方ないけど、家が事務所から片道3時間かかるという距離が大変なハンディになったことは間違いないだろうし、箱根バスツァーの時、『ダンシング・セブンティーン』がうまく歌えなくて泣いてしまったということも理由の1つかも知れない。
 今後の彼女が、どういう道を歩むのかはわからないけど、天然ボケのキャラクターをいつまでも忘れないでほしいと思う。そして、チャムと仲良くね…。

[論説委員■本間 寛]



[りょんりょん]と僕たちの、夢物語

 今年の《真夏の祭典vol.4》は、私にとって耐えがたい、辛く悲しい思い出となってしまいました。私の心の支えであった、[りょんりょん]こと、片桐陵子ちゃんの突然の退会のことです。
 本田博子ちゃんから発せられた言葉が信じられず、頭が真っ白になってしまいました。諸岡なみ子ちゃんのことは、特に驚きもありませんでしたが、まさか りょんりょんまで辞めてしまうとは…。前日の日比谷野音で、[ワースト]のメンバーから外れていたので、「もしや!?」とは思いましたが、少しレッスンが遅れているだけで、すぐに戻って くるだろうと、あまり気にも留めていませんでした。こんなことになるんだったら、もっとりょんりょんの姿を脳裏に焼きつけておけば良かった。何かやってあげられることは無かっただろうか? そう考えると、後悔ばかりが私の心を支配します。
片桐陵子

 さて、くよくよばかりしても仕方がないので、陵子ちゃんとの出逢いから現在に至るまでを振り返ってみようと思います。昨年の8月26日、《SKi・24時間世界一周》夜の部が、陵子ちゃんの初登場でした。この年の私は、24,26,27日の夜の部だけ“3時間特大ライブ”に参加しました。ですから、本当に“たまたま”見た、という感じでした。
 吉成さんと(青山)れいちゃんに、いろいろ質問されていた陵子ちゃんは、おどおどしたような雰囲気で、守ってあげたくなるような“おっとりした娘”という印象でした。それと、私だけかも知れませんが、[Melody] の田中有紀美ちゃんに少し似ているなと思って、そんな訳で陵子ちゃんのことをよく覚えていました。
 そして、10月。小林久子ちゃんとのMCや、[ザ・シーンマシーン]での陵子ちゃんは、オヤオヤちょっと変わった娘だなぁと思いました。前に座っていた人が、「猫かぶってるよぉー」などと言っていました。
 比較的、元気で明るい娘が多い3期生の中にあって、こんなにおっとりしてて、“少女性”のある娘がいてもいいじゃないか? 少しくらい、計算していても構わない。そう思うようになってから、少なくとも私は、「この娘を応援していこう、守っていこう」と決心しました。しかも、その想いをあと押しするかのように、コミティ・ビデオで、「事務所まで、片道3時間半もかかる」と言うではありませんか。これで、私の心は揺るぎないものになりました。
 12月の《インディーズ・パーティ》〔渋谷・プラネット〕では、『青春ラプソディ』を田村千秋ちゃんに助けてもらいながらも、一生懸命歌っていました。さらに、24日の《SKiのクリスマス'95》〔北沢タウンホール〕で、初めて陵子ちゃんと握手をしました。が、ちょっとした事情で、もう一度握手することになったのです。「すいません」と言った私に、「あっ、いぇいぇ」と、陵子ちゃんはフォローしてくれました。こんな、ちょっとした心遣い、何事にも一生懸命な姿が、私の心を打ちました。

 ところが、その当時、まだ(陵子ちゃんの)ファンの方も少なかったようで、私はもっと多くの人に、陵子ちゃんの良さを知ってもらいたかったのです。そこで考えたのが、何かファンの方が親しみを持てるニックネームはないものか? ということでした。その頃、ちょうど井上裕紀子ちゃんに[ゆっきぃ]という呼び名が定着しはじめていましたから、陵子ちゃんにも是非…、と考えました。
 SKiファンの友人と電話で相談して決まったのが、皆さんご存じの[りょんりょん]だった訳です。早速、1月の3期生公演から使い始めました。4月の千葉までは、ほとんど拡まりませんでしたが、横浜公演あたりから、少しづつ皆さんも使ってくれるようになりました。陵子ちゃんのキャラクターに合っていたのかも知れませんね。
 それと、この頃から、“陵子ちゃん、一推し!”という方も多くなってきました。極めつけは、5月のこまばで、『ごあいさつ』のときに、「♪ 私の名前は、りょんりょん よ〜」と、元気よく歌ってくれたし、大宮公演の握手会で、「これ(ニックネーム)、気に入ってるんですよ。」と言ってくれたことです。本当に、うれしい限りでした。
 その後、[陵子ちゃん=りょんりょん] が定着し、ユニットのほうも [静寂] に入り、やっとこれで陵子ちゃんが、SKiファンの多くにとって、より身近な存在になったなあと、感慨にふけっていました。
 その一方で、出番の少なさが気になっていました。事務所は、陵子ちゃんをどの程度評価してくれているのだろう?
 それとも、学校との両立が難しいのか? 他のメンバーとは、うまくやれているのだろうか? いるいろな心配が、頭の中をよぎりました。夏休みの、《ワーストツァー》にも、陵子ちゃんは参加できず、不安は募るばかり…。

 そして、退会。
 いま思えば、陵助&久夫のショート・コントや、MCでのおかしな発言など、陵子ちゃんは精一杯、私たちを楽しませてくれました。何より、少女の持つ未完成な部分をより強く感じさせ、夢の世界へ自然に誘ってくれました。
 あの、場を和ませるような おっとりとした口調で、時間をしばし忘れてしまうような、貴重な素晴らしい空間を創ってくれたと思います。
 賛否両論あると思いますが、陵子ちゃんは、純粋で素直な心の優しい、かわいらしい女の子でした。それは、あの大きな瞳からも感じとれるのではないでしょうか? ほのぼのとしてあたたかい、素朴で優しい、放っておくわけにはいかない…。そんな、最近の女の子からは感じとれない雰囲気を持っていますよね。そして、おどおどしてしまい、頼りなく、誰かが必要そうな表情も…。
 【心の優しさ】といえば、こんなことがありました。今年1月の《はじめまして3期生委員会》公演の公開生徒総会のとき、“高校生の男女交際”のテーマで、ダメ派にまわったときの陵子ちゃんの発言です。
 「(理由は)怖いから…。それに、時間とかなくて、あまり会えなかったら、相手の人に悪いと思うからです。」
 このとき私は、胸にグッときてしまったのですが、冷静に考えると、なんて他者に対する思いやりのある娘なんだろうと、しみじみと感じました。これは、計算してできるキャラクターではないと思います。(少しはあったとしても…)私は、なかったと信じたい。
 よく言われることですが、いま大人たちが、いぇ私たち現代人が忘れ、失ってしまっている“何か”を、陵子ちゃんは持っています。彼女には、このまま のびのびと成長してもらいたいものです。

 「さようなら、りょんりょん!」 学校との両立は、僕らの想像以上に大変だったんだろうね。お疲れさま。これ からは自分のことを、これまで以上にもっともっと大切にしてくださいね。陰ながら、応援しています。
 僕にとってあなたは、まさに“天使”そのものでした。そんなあなたに出逢えたことを、最高に幸せに思い、そして誇りに思います。たまに、僕たちのことを思い出してくれたら、うれしいです。
 たくさんの幸せをくれて、本当にありがとう、りょんりょん!

 こうして、「[りょんりょん]と僕たちの夢物語」は、終わりを告げようとしています。

<P.S.> 11月に、お別れ会がありますね。僕は、何としてでも行きます。もちろん来年の卒業式にも…。それまで、この“夢物語”は、まだ終わりません。

[文・写真とも:埼玉県/りょんりょんの人]



片桐陵子 雨のサービスエリアで…

 7月の箱根バスツァーの帰り、編集長の乗っていた1号車で山手線ゲームをしたとき、“有名客の名前”というお題で、他の有名人の名前に混じって、「しゃしょうさん」とりょんりょんが言っていたと、休憩のために立ち寄った、海老名のサービスエリアで、編集長から聞かされた。「恥ずかしいな…」と思う半面、少しうれしくなった。
 ちょうど、その時は雨が降っていて、5台のバスから吐き出されたメンバーとファンが、売店の前の屋根の下に集まっていた。そんな中、りょんりょんが、他のメンバー2人と建物から出てきたので、私は勇気を持って話しかけてみることにした。
 「山手線ゲームで、私の名前を言っていただいたそうで。」と言うと、りょんりょんは「ごめんなさい…。」と謝ろうとしたので、「いぇいぇ、光栄です。」とお礼を述べた。有名客なんて、他にいくらでもいるのに、その中に私も入っていたなんて…。

 夏の終わりに、博子先生から、衝撃の言葉が…。
 その瞬間、みんなの声はひとつになった。誰からも愛されていた、りょんりょん。やはり、あなたは偉大な人です。[陵助・久夫]のステージは、寒かったけど(笑)、りょんりょんにとっては、一番あたたかな時間だったに違いありません。だって、翌月の公演で、親友の(小林)久子ちゃんが寂しそうにしてましたもの…。
 SKiのメンバーとしては、あと2回しか会うことができないけど、いつかきっと、私たちの前に姿を現してくれることを信じて…。「ウォンチュ!」

[文・写真とも:副編集長■しろくま☆しゃしょう]



片桐陵子・卒業 〜最後の夏〜

 早いもので、あれから1年。
 そう、去年の《真夏の祭典III》から…。出逢いの夏が、別れの夏になってしまった。
 当時は、3期生なんて全くわからず、7月8日の寿隊で、彩子らしき娘を見ていただけ。いきなり、11名もの娘たちが紹介されたが、彼女らを目の前にして混乱した(笑)。一度にそんなに増えると、顔と名前がいっそう、一致しなくなってしまう。SKi歴、2ヶ月目の話である(笑)。
 3期生と言えば、「実力派揃いで即戦力ばかり」ってイメージがあった。後になってわかることだが、結構「個性派揃い」でもあった。アニメの世界から飛び出したような娘、猿のマネをする娘、ネコと話せる娘、負けず嫌いな娘、天性の踊り子(笑)…。いろいろなキャラクターを持った、娘たちだった。その時のインパクトの強さと言えば、A子(当時)を越える娘はいなかった(笑)。が、地味ではあったが、「この娘はいける!!」って娘がいた。そう、片桐陵子ちゃん。と言っても、「3期生ならば」って条件付きでの話。この時があたしと陵子ちゃんの出逢いだった。

 しかし、「3期生なんて…」って言ってられなくなった。IJF2のステージでは、早くも3期生たちがステージに上がり、1,2期生と共に歌い、共に踊っている。2期生の潜伏期間に比べると明らかに急性(笑)で、ファンさんの間にもだんだんと影響が出始めていた。
 「私、ネコと話せるんですよ。」真面目にそう語る娘がいる。心が通じる者同士だと、言葉の障害は乗り越えられるのか? そんな事を感じながら、彼女を見ていた。ちょっとおっとりした口調で、淡々と語る。「そんな事ねぇよ!」そう思っても憎めない、不思議なキャラクター。ぼぉっとしてる様にも見えるが、時々 とんでもない爆弾発言をする。
 忘れられないのは、今年のGWの大宮公演だろう。決して年頃の女の子が、人前で言うような事では無いけれど、全然イヤミのない、そしていやらしさもない、水爆級の「大人発言」。この時は、会場のファンさん(c)の方が困ってしまっていた。あたしも、この1年間でかなりの数の会場へ出向いたけれど、リアクションに困ったのは初めてだった。
 そんな事もあれば、公開生徒総会などでは、おもむろに手を上げ、クルクルと回りはじめる事もある。発言権を得る為&客をこわれさせる為の手段としては、最高だった。

 陵子ちゃんがステージにいると、「何か起こるぞ。何かやってくれるぞ。」 そういった気持ちになって、何かが 起こる事を期待していた。そして期待通りにクルクル回り、「片桐陵子」をアピールしていた。
 数々のパフォーマンスを見せてくれた、陵子ちゃん。中でも [地獄の陵](5月5日《SKiの子供の日[昼の部]》)は、最上級ではないだろうか? 普段のステージの陵子ちゃんと言えば、どちらかと言うと おとなしい方だったと思う。それがあれである(爆笑)。女子プロのレスラーと化した彼女を見て、一瞬 自分の目を疑った。あの陵子ちゃんがどうしてこんな姿に。会場全体でコールした「りょーぅ!りょーぅ!」は今でも覚えている。どうしても、完全に自分自身をすてきれてない姿がとても可愛かった。
 おとなしいってイメージが先行してしまいがちな陵子ちゃんだったけど、一層不可解なキャラクターだと認識する事になる。[陵助・久夫]だ。SKi初の漫才コンビ? 久子ちゃんと波長が合うのか、良いコンビかもしれない。
 そもそも「ボケ」系のキャラクターだったのかもしれないが、GWの《青春桜花SHOW》でのミニコント。この2人で「恋」を紹介するために、買い物帰りの宇宙人(笑)を交えたコントを披露した。
 お笑いってのは「落ち」があってこそ「お笑い」な訳だけど、この2人には関係なかった様だ(笑)。共にボケ役にも思えたが、微妙な間のやり取りが、会場を楽しませてくれた。
 振り返れば、陵子ちゃんって結構面白くて、あたしたちを楽しませてくれていたんだなぁって思う。しかし、それらは本来の「歌」ではなく、関連するコーナーであり、MCであり、ミニコントだった。残念ながら、あたしは陵子ちゃんのヴォーカルの記憶がない。ほぼ同時期に、SKiに入った3期生でも、早くからヴォーカルを取り、ソロで歌っているメンバもいる。陵子ちゃん及び、陵子ちゃんファンの方々には失礼だが、あたしの中では最高の脇役でした。「まだまだ、これから」と思いながら、はや1年。最後の夏はやって来た…。

 陵子ちゃんは今まで、片道3時間という時間を掛けて、事務所まで通っていた。3時間と言えば、新幹線だと東京から大阪ぐらいまで行ってしまう。事務所と往復するだけで、1日の4分の1が終わってしまうのだ。高校生という、将来に一番影響する大事な時期に、限られた時間を割き、勉強と仕事の両立を1年間頑張ってきた。それだけでも 偉いと思う。今までよく頑張ってきたよ。
 同時期にSKiに入っても、練習時間などの差で、時間が経過すればするほど他のメンバとの差が広がっていく。練習しても練習しても、どんどん どんどん…。クルクル回るのも、ブッ飛んだ衣装着るのも、出来る限りの頑張りだったのかもしれない。

 陵子ちゃん、今までお疲れさまでした。そして、あたしたちを楽しませてくれてありがとう。またいつか、あたしたちの前でクルクルと回って見せて下さい。そして今度こそ、メインになってください。
 2月の卒業式には行きます。その時まで、陵子ちゃんの姿を見ることが出来ません。卒業式には、いつものままの陵子ちゃんで、ありのままの陵子ちゃんでいてください。
 卒業式まで「さ・よ・う・な・ら」。

 照りつける残暑の中、来年2月のカレンダーを眺めながら、最後の夏が終わろうとしていた。

[論説委員■まる井]


「陵子ちゃん、

また、一緒に遊ぼうね!」



ファンのみんな & 久子 より… 


小林久子
片桐陵子

vol.11目次