恋をしようよ


初代[みかちゃん] =奥山みか=

 SKiナンバーでも、今や定番中の定番となっている『恋のインビテーション』。そう、あの「みかみかみかみか、みかちゃ〜ん!」と会場が騒然となる曲である。現在、歌っているメンバーは、言うまでもなく橋本美香ちゃんなんだけど、94年の春までは、実は違う「みか」が歌っていた。

奥山みか  私が、初めてSKiを見たのは、93年夏の向ケ丘遊園のイベントで、その直後に、こまばエミナースにおいて記念すべき《第1回 真夏の祭典》が行われた。
 SKiを見るのは2度目だったから、吉成以外は誰が誰だか分からないし、曲も全然分からなかった。ただし、意外にもオールド・ポップスとかを歌ってくれたので、そちらのほうの印象が強かった。
 そんな中で、私はカーペンターズの『Sing』を歌ったメンバーに注目した。まずは、その歌声。やや低めのしっとりした歌声は、かのカレン・カーペンターに似ていて、曲のイメージにピッタリだった。美しいストレート・ロングヘアーに、一見大人っぽいルックス。でも、よく見ると八重歯があったりして、かわいい感じもする。そう、それが[奥山みか{当時は、美夏}]だった。
 ユニセフのキャンペーンの告知なんかも、彼女の落ち着いた声で言ってもらうと、みょーに説得力がある。当時、高3だった彼女は、同級生(c)の青山 れいと並んでメンバーの中では「お姉さん」で、吉成と他のメンバーとをつなぐ存在のように見えた。この[れい・みか]は実にいいコンビで、フォーメーションでもセンターの吉成をサポートする役割を果たすことが多かった。

 サポート役だった[れい・みか]が主役になったのは、93年10月に発売されたシングル『笑顔がスキッ!』のカップリング曲『わかるといいね』だった。2人が並んで歌う姿はバランスがよく、また、落ち着いた曲調も2人にピッタリだった。
 さらに、翌94年5月の《SKi+?》公演は1つの大きな転機だった。[?(ハテナ)]というから何かと思えば、なんと[れい・みか]の2人による新ユニットの名前だったのだ。しかも、和服を着て演歌調の曲を歌い、それが実によく似合っている。私は、演歌は好きではないのだが、これなら文句のつけようが無い。
 しかし、それ以上に印象的だったのは、この公演で奥山が歌ったバラード『Hearts Never Lie』だった。それまでも、ある程度「歌はうまい」と思っていたけど、こんなすごい曲を歌えるとは思わなかった。しかも、彼女はこの曲の作詞もしたと いう。単純な恋愛詞ではない、実に奥の深い詞なので、私は二重に驚いてしまった。当然のことながら、今後の奥山に大きな期待を持つことになった。
 そうして迎えた94年8月、《ドン・ジョバンニ》を見るために、こまばエミナースを訪れた私は、1枚の“貼り紙”を見て仰天してしまった。「奥山みかは、一身上の都合で休業。次回出演は卒業式…」というものだった。あまりのことに、私は頭の中が真っ白になってしまった。ステージが始まっても、どこかに奥山がいるような気がする。そんな気持ちは、95年1月、彼女が正式に卒業するまで続いた。

 それから1年後、彼女がクラリオン・ガールになったという話を聞いた。事実、彼女は水着を着て、[泉 尚子]という名前でグラビアに登場するようになった。
 一度だけ、泉尚子のイベントにも行ったけど、彼女が[奥山みか]でなくなった事実を確認させられ、それ以後は一度も行っていない。やはり、私が好きだったのは[奥山みか]であって、[泉 尚子]ではないということだ。
 今、『恋のインビテーション』は2代目[みかちゃん]の橋本美香ちゃんが、『Hearts never lie』は[ゆっきぃ]こと井上裕紀子ちゃんが受け継いでいるが、2人とも奥山に負けず劣らず、うまく歌っている。[?]も、ゆっきぃと小野田亜美ちゃんで再スタートすることになった。
 奥山みかは居なくなっても、彼女の残したものは、SKiの中で脈々と受け継がれている。SKiが続く限り、奥山みかは私の心の中に生き続けることだろう…。

[論説委員■本間 寛]


97年1月号目次