《“タダ”より高いものはない》
私は約10年前、何故だか知らないけど、アイドル・ファンになっていた。と言っても、親衛隊のように全国のコンサートを追っかけるようなファンではなく、アイドルの出演するテレビ番組を見たり、家でCDを聴いたりする、普通のアイドル・ファンだった。それも、個体(ソロ)のアイドルではなく、グループ・アイドルばかり{おニャン子クラブ,桜っ子クラブさくら組,乙女塾系(CoCo,ribbon,Qlair),Melodyなど}にハマっていた。
ところが、1994(平成6)年秋にCoCoが解散して、「仕事も忙しくなってきたことだし、この機会にアイドル・ファンを引退しよう」と考え、一時期アイドルからは離れていた。その後しばらくして、知人から呼び出され、何かと思えば、「12月に、制服向上委員会のコンサートが大阪であるんだけど、チケットが1枚余っているから、君がもらってくれないか」と言われた。自他ともに認めるほどの「ケチ」で、しかも“タダ”という言葉に弱い私は、二つ返事でそのチケットを譲ってもらうことになった。
アイドルから離れていた私は、チケットはもらったものの、その後の処置に困ってしまい、公演前日まで考え続けた結果、「こうなったら、せっかく(チケットが)“タダ”なんだし、行こう!」いう結論になり、12月28日、いよいよ大阪のアメリカ村にある〔コーク・ステップホール〕へとたどり着いた。
そこで見たものは、当たり前のことだが、制服を着た可愛い女の子たちが歌って踊っているのである。しかも、話には聞いていたが、唱歌をあそこまで綺麗に歌いこなすのには、本当に感動してしまった。その日は、それで終わってしまったが、私の心の中では、“何か”が動き始めていた。それはおそらく、離れていた「アイドル・ファンとしての生活」への憧れだったかも知れない。
そんなある日、たまたま買ったビデオ〈ライブアイドルNo.1〉に同封されていたハガキを、とりあえず出してみた。すると後日、《SKi体験コンサート》の招待券が送られてきて、大阪公演に続き、“タダ”でコンサートに行くことになった。
翌年の2月26日、東京〔渋谷公会堂〕へ初めて遠征したが、私は1曲目の『制服宣言』でいきなり、みーつー[松本美雪]にハマってしまった。何故だと言われても、自分でも分からないから返答に困ってしまうのだけど、みーつーには自分を引きつける“何か”があるのだろう。
わずか55分間のコンサートだったが、私にとっては、その55分間で「後悔」というものを経験してしまった。それは、「一時期でも、アイドルから離れてしまった自分」に対してへの素直な気持ちである。この日以来、そのような単純なことから、私のSKiファンとしての生活が始まった。それから、4月23日の《アイドル・ジャパン・フェスティバル》〔日比谷野外大音楽堂〕で、初めて有料のコンサートを観たのを皮切りに、ほぼ毎月のように東京へ遠征している。その、“タダ”でもらったチケットが、私をアイドルの世界に引き戻し、車も、今までのポンコツ車から新車に買い換え、資料整理や情報交換をするため、パソコンまで買ってしまった。
おまけに、毎月、JR東海のお世話にもなっているし…(^^;。
SKiのファンを初めて以来、人からは「ケチ」と言われなくなったし、自分でも何かが変わっただろう。しかし、「タダほど高いものはない」ということだけは、今でも感じている。
[京都府/竹ちゃん]
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