DEAD FLOWER Live
at.下北沢“Que” 1996/12/ 7(Sat) 19:00-
大人の夜を彩るバンド [DEAD FLOWER(枯れた花)]。SKiの松田ゆかり,[めんたんぴん]の佐々木忠平,[サンセッツ]のケニー井上と、異色の顔合わせのバンドである(めんたんぴんもサンセッツも、私は知らないけどね…)。チラシでは、「ベース・松田ゆかり」となっているが、本人は弾かずにヴォーカルに徹していた。他のメンバーは、ギターの忠平さんとケニーさんに加え、ベース,キーボード,ドラム、そしてサイド・ヴォーカルとしてゆっきぃ[井上裕紀子]が参加。
この日、ゆっきぃは2曲歌った内の1曲で、自ら作詞した歌を披露し、あとはコーラス&タンバリンとして出演していた。そしてコーラスは、ハードレインのふたり、“Midnight Cowboy”モッチと、“真面目な少年”ショーゴであります(命名は、佐々木忠平さん)。ライブの話に入ると、まず気になるのが“客層”の違い。[白い人]を筆頭とする“いつもの”お客さんとは別に、忠平さんやケニーさんのファンと思われる、おじさん・おばさん(^^;の客も結構多かった。
最初に登場したのは、[ハードレイン]。5曲も歌った。
この日は、ふたりとも気合いが入っていたようで、とてもノリが良い。お客からの「やっぱ(c)、フォークはいいね!」の声に、モッチさんが嬉しそうに笑っていた。
続いて、吉成圭子さんが司会として登場。1997年4月に、[JRR(Japan Rock Record)] を設立することを発表して、すぐに退場。ちなみに、吉成さんの出番はこれだけ(笑)。いよいよ、[DEAD FLOWER] のお出ましだ。が、私は佐々木忠平という人を目の前にし、その容貌に驚かされた。私の中での、忠平氏のイメージといえば、P会報vol.14の〈ゲスト・コラム〉欄で書いていた、「私は二十数年、ロック・ミュージックにこだわってきた。付き合う相手(アーティスト)は、汗臭い男たちであった。{中略} 女の子相手といっても、私のスタンスは変わらない。私は強度の近視なので、(SKiの)メンバーがどれほど可愛く美しいのか、よく分からない(視力が上がったら、口が聞けなくなるかも…)。{後略}」というイメージが強かった。文章だけを読めば、いかにもロック一筋に情熱を注ぐ、ストイックで不器用なロックン・ローラーといった印象を受けるが、ステージ上に現れた忠平氏の風貌を文字だけで言い表すと…。
一片の曇り無い、秀頭。重厚にして、その存在感を誇示するような巨体は象の如く、眼鏡の奥の細き双眸(そうぼう)は鋭き眼光を湛えている。羅漢像を思わせるその風体は、ロックン・ローラーというよりも、むしろヒール(悪役)のプロレスラーといった感がある。「この人が、『涙のセブンティーン』なんかを作曲した人なのか…」と思うと、何だか微笑ましい。演奏はというと、みなさん実力派揃いで、本格的に本格的なバンドだ。こういった、レベルの高いバンドに、ゆっきぃを参加させたのは正解で、彼女自身、SKiの音楽との“音”の違いはよく分かっていたようだ。このような経験が彼女にとって、ひいてはSKiにとっての良い刺激になればいいと思う。
MCのときに気がついたが、松田ゆかりさんの声がガラガラになっている。なんでも、練習のしすぎで声が枯れたとか…。「たまには、こんな声もいいでしょう」と、本人はあまり深刻に考えていないご様子。まぁ、バンド名が“枯れた花”だから、「これでいいのだ(c)」(笑)。 MCの内容も、またスゴイ。
ゆ「今日は、大人の夜ということで…」
忠「酒飲んで、タバコ吸えば、大人」
ゆ「えっ、じゃぁ、私タバコ吸ったことないから…、子供!?」
忠「じゃぁ、今度吸わせてやるよ」
…てな、話が続く。SKiの(コンサートの)ショート・コントよりも、ずっと面白い。その後、「子供は、引っ込みます」と言い残して、松田,井上(裕紀子)は、一時退場。ゆかりさんの喉を気遣っての配慮か、はたまた、忠平氏やケニーさんのファンへのサービスか、しばらくは“大人のバンド”の演奏が続く。
それにしても、ステージの上でタバコをふかすリラックスぶり…。佐々木忠平とは、豪快な人物である。「この人が、『恋は雪のよう』とかを作曲した方なんだ」と思って聴くと、実に味わい深い演奏に感じます。再び、松田,井上(裕紀子)両名が登場。ライブは終盤に入り、ラストの曲が終わると、客からは「(謎の)もう一回!」コールが起こる。
アンコールで2曲歌ったあと、「高橋(廣行プロデューサー)ってのが、『淋しいから、もう1曲やれ!』って言ってる」と、忠平氏。すかさず、客から「制服宣言!」の声が掛かる。ますます、異様なライブになってきた…。結局、『INATORI IS NO.1』を演奏したが、更に興奮冷めやらぬ客の声に応え、異例のダブル・アンコール。客からは次々に『同級生』『笑顔がスキッ!』などのタイトルが挙げられる。「でも、その曲全部知ってたりしてなぁ〜」と、忠平氏。この、スキンヘッドの巨漢(^^;;;こそが、望月菜々,松田ゆかりのソロ・アルバムや、SKiのアルバム〈ワースト〉を手がけたプロデューサー殿である。さすがだ…。
こうして、[DEAD FLOWER]のファースト・ライブは幕を閉じた。最初は、松田ゆかりさん目当てで出掛けたつもりだったが、ライブの内容自体が素晴らしかったし、思いがけず私服のゆっきぃや、“ヘソを出して踊り狂う(笑)”モッチさんなど、滅多に見られないものも見られて楽しかった。
そして何より、松田ゆかりさんが気持ち良さそうに歌っていたのが、私にはとても嬉しかった。
“FLOWER”のスペルを覚えて、少し賢くなった?[群馬県/知恵之輪士]
[写真:しろくま☆しゃしょう]
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