こまばへの道


滝本久美 SKiはじめて物語

 つい最近の話で申し訳ないが、僕が初めてSKiのコンサート会場へと足を運んだのは昨年の2月19日、〔渋谷公会堂〕での《SKiのカウントダウン100&第3回卒業式》だった。以前から、「一度、SKiを(生で)見てみたい」と思っていたのだが、SKiには他のアイドルと違い、何かと近づき難い雰囲気があって、実際に見る機会がなかなかやって来なかった。
 当時、メンバーの写真を見ても、特に目立った女の子はいなかったが、会場も馴染みの〔渋公〕ということもあって、とりあえずチケットを買ってみた。開場時間ギリギリに着くと、ロビーでみんなが行列を作って〈卒業記念グッズ〉を買い求めていた。僕もその列に並んでみたが、当然のことながらメンバーの名前を知らないため、どの子のを買って良いのかが分からない。しばらく他の人の様子を見ていると、望月菜々ちゃんのグッズを買っていく人が多かったので、私もそれに従った(後で思えば、滝本久美ちゃんのも買っておけばよかったかなぁ…)
 席に着き、開演を待っていると、周りの客同士で「○○ちゃんの卒業は覚悟していたけど、まさか△△ちゃんまでとはねぇ…」なんて会話をしている。まるで、おニャン子(クラブの)ファンの会話のようで、何だかよく分からなかったが、異様に懐かしく感じた。
 そしてステージが始まり、延々と歌とMCが続くのだが、ここで驚いたのは、ほとんどの客が立ち上がらずに、おとなしくステージを見つめていたことだ。今まで、アイドルのコンサートといえば、「コールをかけながら飛ぶ」のが常識だと思っていたのだが、「これが、SKiコンサートのルールなのだろう」と勝手に納得し、僕も座って手拍子をしていた。それにしても、相変わらず渋公の椅子は狭い。こんな椅子に何時間も座っていられるなんて、結構みなさん忍耐力がありますねぇ(笑)。

 初めて観たコンサートの感想は、「“高校の学園祭”みたいだなぁ」というものだった。それは、悪い意味で言っているのではない。彼女たちがステージに立つだけで、自分が高校生に戻ったような不思議な感覚に、会場内が包まれるのだ。懐かしさと新鮮さを同時に感じ、自分が若返ったような錯覚を起こす{でも結局のところ、何曲か飛んだだけで息が切れるんだから、実際には若返っていないんだよなぁ(笑)}
 そして、予想を遙かに上回る楽曲のレベルと、可愛らしい歌詞の内容とかにも驚かされた。SKiの曲は、「アイドル・ソングの本来あるべき姿」に限りなく近いものだと、僕は思う。純粋さ・さわやかさの無い、ドロドロした内容のアイドル・ソングが最近多いから、特にそう感じたのかも知れない。“夢を見るために、アイドルを見ている”のに、現実世界をそのまま描いているような、ドロドロした内容の歌詞に、ただセカセカしてるだけのテクノ系の曲を引っ付けた、ミュージシャン気取りのアイドル・ソング(!?)を聴かされるのは、もうたくさんだ!って感じなもんで…。
 また、オリジナル曲の多さにも驚かされた。すべての曲を完全に覚えている人は、果たして何人いるのだろうか? ただ残念なことに、当時は曲のタイトルすら知らなかったので、どの曲を聴いたのかはさっぱり判らない。覚えているのは、「それぞれの歌の完成度が高かった」ように感じた、ということだけだ。

 そうこうしているうち、《カウントダウン》が終わって、《卒業式》が始まった。卒業生が、次々と挨拶している。内容は、みなさんご存じなので省略するが、「みんな芸能界で成功したくて、SKiに入ってきたんだなぁ」などと、当たり前のことを思うとともに、「この子たちは、SKiを卒業してから果たして成功できるのだろうか?」と、誰についてという訳でなく、疑問に感じた。
 確かに、SKiのメンバーは可愛い。しかし、SKiというグループでなく、ソロで活動していくだけの強烈なインパクトやカリスマ性を持った子は、正直なところ少ないように感じたからだ。
 そして、「この“卒業メンバーのファン”は、どのような気持ちでこの日を迎えたのだろうか」と、考えた。おニャン子クラブのファンだった時でも、一推しのゆうゆ(岩井由紀子)は解散するまで現役だったし、僕にはこういった形(途中)で、一推しのメンバーが卒業していったという経験が無いので、全く想像がつかないのだが、会場内の雰囲気がどんどん変化していることからも、事の重大さが読み取れた。
 そのあとも歌が続き、『青春ラプソディ』(だったかな?)のところで、ようやくオール・スタンディングになった。そこには、曲を知らないにもかかわらず、周りに合わせてコールを掛けながら必死になって飛ぶ、SKiの魅力にとりつかれた僕の姿があった(みんなが静かにしてるときは、ちゃんとおとなしくしているので、悪しからず…)。

<P.S.> 当時、卒業メンバーが誰なのか全く知らなかったのですが、今になって、卒業したメンバーが全員主力だったことを知り、「もっと早くから、SKiに通うべきだった…。」と後悔しています。
 それから、僕の〔こまば〕通いが始まり、いろんなメンバーにハマってしまい、訳が解らなくなっているのですが、そんな僕でもただひとつ分かることは、“とにかく、SKiのステージは楽しい!”ということです。
 これからも、「いつも、いつまでも、いつものように…」の精神(!?)で、メンバーを 暖かく見守っていきたいと思います。

[神奈川県/中村有臣 {<ORANGE IDOL>編集部}


97年3月号目次