【第8回】SKiの“メッセージ”
3月23日の夜の部《史上最強のSKiコンサート》。私は前から2列目の席だったので、メンバーがどんな表情で歌っているのか、じっくりと観察(?)することができた。
一番印象深かったのは斉藤美緒子さんで、一度歌い出しのところで声が出なかったことがあった。次のフレーズまで少し間が空くのだが、そのわずかの間の斉藤さんの表情の変化は、実に素晴らしいものだった。まず「しまった!」と、ものすごく悔しそうな顔をしてそれをグッと奥歯でかみ締め、そのまま喉の奥に飲み込み、次の瞬間には完璧に歌おうとするのです。「あぁ、彼女はプロの歌手だなぁ」と実感しました。
ちょうど1年前の3月ごろ、斉藤さんには天井を見る癖があったのをご存じだろうか。2月に一期生がごっそりと抜けて、入れ替わりに三期生が表舞台へと上がってきたのだが、その中でも「斉藤さんはとても落ち着いているなぁ」と思って見ていたが、失敗すると“目だけが天井を向いて”いた。もう、ソロで歌うときなんか、5秒に一回は天井を見ている。だいぶ緊張しているのだろう。
翌4月。また、天井に視線が行くのか?{←ヤな客だと思われてるだろうな、俺}と思いきや、彼女の視線はずっと客席を向いていた。たった1ヶ月の間に舞台慣れしたと考えるよりも、自分で気付いたか、誰かに指摘されるかして意識的にそれを直したんじゃないかと思う。斉藤美緒子という人は、「歌手であり、ダンサーなんだなぁ」とつくづく思う。
同じSKiのメンバーでも、菊地彩子さんの場合だと、失敗をしても笑顔を絶やさないことにしているのだと、私には見える。それもまたプロフェッショナルな考えで、野球でもサッカーでもバスケでも、一点取られたくらいではすぐに負けることはない。「あぁ、こんなにたくさんのお客さんの前で失敗しちゃってどうしよう…」ってパニックに陥ってしまったら完全な失敗だ。たとえ、振りを一つ間違えたとしても、それを引きずらないのがプロだと思う。だが、斉藤さんと比べると、菊地さんは歌手というよりむしろ女優っぽいところがあると思う。
本田博子さんはMCの時でも、「あっ、間違えました。どうもすみません」と結構素直に謝ってしまいますよね。日本人らしい謙虚な態度です。宮田直美さんが一人だけ他のメンバーと振りが逆になってしまった時などは、…十中八九笑ってごまかす。良くも悪くも人間らしいやり方だ(笑)。より象徴的な意味で、宮田さんはアイドルだと思う。
ただここでは、実際に失敗した時にどの対処法が正しいかは考えないことにする{考えてもいいのだが、ただでさえ長い私のコーナーが更に長くなってしまっては。他の人に迷惑が掛かるので遠慮しておく(←単に考えてないだけだったりして…)}。
ガラリと変わって、私が押場さんというイタリア語の先生と会った時の話をします。
【1本2本3本】という遊びをご存じでしょうか? 先生は人指し指を立てて、「これが1本」。次に人指し指と中指を立てて、「これが2本」。最後に人指し指,中指,薬指を立てて、「これが3本」と説明しました。
さぁ、ここからが本番です。先生は人指し指だけを立て、「これ、何本(なん[ぼん])?」と質問します。人指し指だけだったので、「1本(いっ[ぽん])」と答えたら、「ブー、これは3(さん[ぼん])」と言われました。
もう分かった方がいるかも知れませんね。分からない方のために説明しますと、この遊びは指の数なんてどうでもいいんです。わざと [カッコ] 書きで強調しているように、「ぽん,ほん,ぼん のうちのどれか?」を尋ねているのです。つまり、何[ぼん]なら3ぼん、何[ほん]なら2ほん、何[ぽん]なら1ぽん、という具合です。
分かってしまえば実にどうってことのない遊びなのですが、勘の悪い人は最後まで分からない。「え〜っ、どうしてみんな分かるの?」と不思議がるが、先生が気を利かせて「これ、何(なん[ぽん])?」と言うと、やっと理解できる。
「外国語を話すというのは、こういうことなんだよ」と押場先生は言った。多分、「文化も風習も違う外国の言葉は、日本語のルールで考えても分からない。単語とか文法も大事だが。“相手は自分に何を話そうとしているのか”話のポイントがどこにあるのかを押さえることが大切だ」と言いたかったのではないだろうか?
斉藤美緒子さんの誕生日は8月11日で、獅子座の生まれです。百獣の王とも言われるライオンですが、私も同じ獅子座生まれなので、斉藤さんの「自分の歌に対するプライド」を少しは分かるような気がします。他人が何と言おうが、自分で納得できなければそれは失敗でしかない。そういう“ちょっと頑固なこだわり”が獅子座にはある。頑張ってね、美緒子ちゃん。私も陰ながら応援させてもらうよ。
SKiは、いじめや環境問題などいろいろな問題に取り組んであるが、それはSKiのメッセージのほんの一部分でしかない。〔ライブアイドル〕というSKiの基本的な部分を見逃してはいけない。歌や踊りや。『ダンシングセブンティーン』で一緒に腕を振り回す一体感…。それが、SKiから我々に向けられた【メッセージ】なのだ。
[写真:しろくま☆しゃしょう・文:群馬県/知恵之輪士]
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