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BW君のよもやま話 〜SKiは好きですか?〜

 本誌97年3月号にて。「本田博子ちゃんは客に媚びている」という人がいて、皆さんは どう思われますか?という意見がありました。そこで、私なりに少し考えてみました。
 「客に媚びている」とは、どういう状況を指すのでしょうか。
 私の今までの経験からいうと、雰囲気や仕草・表情から「あんたたちは、こんなのが 好きなんでしょう」とか「こうやったら満足するんでしょう」という本音が、見ていて 何となく分かってしまうようなアイドルが過去に何人かいました。
 私は、こういったアイドルを「受け手側に媚びている」と思い、CDを買ったり、コンサートに行くぐらいのことはしましたが、余り好きにはなれませんでした。
 極論すると、「アイドルは受け手側(ファン)に媚びていても別に構わない」と私は考えています。でも媚びるのならば、完全に私たち受け手側を騙すか、媚びていることが垣間見えても、それでも魅かれてしまうような“強烈な魅力”がほしいのです。それが芸能人というものなのです。
 そして、そのどちらもできない中途半端な人は、決して芸能界で生き残ることはできないのです。

 さて、本田博子さんのことですが、彼女はステージの上で、実に剽々とした感じで動いています。先日のFCツアー(山中湖)の撮影会でも、カメラを構えたファンの指示に、いつものように嫌な顔一つせず、実に剽々とした感じで応えていました。無論「こうした方が、あなた達は喜ぶんでしょ」という気持ちなど、微塵も感じられません。むしろ、彼女をとりまくファンさん(c)と一緒に楽しんでいるという感じでした。それを見た私は、「博子ちゃんって、いつでもファンサービス精神旺盛な娘なんだなあ。さすがリーダーだけのことはあるわ」と思いました。
 くだんの彼は、彼女のこういったところを「媚びている」と受け取ったのでしょうか。
 確かに他のメンバーに比べ、ファンの求めに対して気軽に瓢々と応えてしまうということで、そう見られてしまうのかも知れません。でも、それはあくまで本田博子という娘のキャラクターであって、こいつを「媚びている」と取るのは、私はどうも違うように感じます。
 それとも、ファンに対して、普通のアイドルよりもサービスすること自体が「媚びている」というのでしょうか。もし、そうだとするのなら、それはSKiのメンバー全員に当てはまるのではないのでしょうか。

 6月1日の《女子高生サミット(日比谷野音)》にて、援助交際についての話となった時。「この場(コンサート)自体が援助交際でしょう。俺も(SKiに今まで)30万払い込んだ」と発言した客がいたそうです。この話を、いまさら蒸し返さないでくれと思う人もいると思います。しかし、今こそきっちりと、私たちファンさん(c)の間で考えなくてはいけない問題だと思います。
 あるミニコミ誌では、この事件について、「社会的な問題に接点を求めて活動している集団ならば、なぜこれに反論できなかったのか。結局、まじめに活動に取り組んでないし、表面的にすら体裁を整えていないのも悪い」という趣旨の意見がありました。
 確かにその通りです。その通りですがそれ以前に、なぜ彼がこんな馬鹿な発言をしてしまったのかを考えてほしいのです。恐らく彼はジョークのつもりだったのでしょう。でも、車寅次郎風の「それを言っちゃぁ、おしめえよ」というべき文句を、なぜメンバーに、面と向かって言うことができたのでしょうか。正直言って、私には信じられません。
 はっきり言って、今やどんなアイドルでもこういうことは、多かれ少なかれ必ず存在します。と同時に、アイドルとそのアイドルのファンの間では、「それを分かっていても許しあう」という【暗黙の了解】があります。そのためには、アイドルとそのファンの間での信頼関係、そして愛情というものがないと成立しえないのです。

 私の持論の一つに。「ファンが思い入れを込めることのできないアイドルは死ぬ(滅びる)」というのがあります。
 それは〈SPA!〉の「ニュースな女たち」で中森明夫が書いていた「見ず知らずの女の子を信じること」というのに近いものです。ただ彼は、「幻想を介在させて、一人の異性を崇拝すること」と、まるで私たちのことを、どこぞの怪しい新興宗教にハマった信者のような、ネガティブな書き方をしていましたが、実際はそうじゃないのですねぇ。
 私達が信じているのは、【アイドルが与える夢】なのです。

本田博子  たとえそれが、紙で作った月のようなフェイクだと分かっていても、自分の好きなアイドルが見せてくれる素敵な夢ならば、そんなことは構わない。これが、「ファンがアイドルを信じること」なのです。ヒロスエ[広末涼子]でも水野あおいでもSKiでも、これこそが私達アイドルファンの根底にあるべきことなのです。
 率直に言って、現在のSKiは、様々な面でかなり苦しくなってきているのは紛れもない事実です。井上裕紀子さんが休演したGW公演でのドタバタぶりは記憶に新しいところです。
 この7月、三代目[静寂向上委員会]が松井陽子をリーダーに誕生しました。これによって、メンバー全員が何らかのユニットに所属することになりました。これは、SKi始まって以来のことと言えます。しかし、入会して間もないメンバーがユニットに加入するなんて、ちょっと前では考えられなかった“事件”なのです。つまり、「もう後がない」ということを象徴しているのです。
 「援助交際」発言の彼は、このような現在のSKiに対して【夢】を感じる事ができず、ついにこの信頼関係を保つことができなくなってしまった人なのでしょう。
 この発言を受けて、本田博子さんは泣き出してしまったと聞きます。一緒に司会進行をしていたサエキけんぞう氏は、「芸能というのは厳しいものです。色々な意見をありがたく頂戴しなければ…」とフォローし(この言葉は、重くも正しい)、彼女に対して一旦袖へと引くよう促しました。しかし、彼女はそれを断わり、任務を遂行しようとしたのです(結局は引いたのだが)
 私は、そんな彼女が「媚びている」とは思えないし、思いたくありません。
 そして、私はアイドルが好きです。アイドル歌謡も好きです。だから今だに「SKiを信じよう」と思っています。「援助交際」発言の彼に言わせれば、私はきっと甘いのでしょう。でも、ずーっとそれでアイドルファンをやってきましたから、いまさら考え方を変えるつもりはありません。

 しかし、こんな甘ーい私も、こう言いたい。
 「『あれもできません。これもできません』では、もう通用しないですよ」と。
 「スタッフもメンバーも、皆、もうそろそろ考え直さないと、マジでヤバイよ!」と。
 「私達には『選択の自由』があります。好きになれないものを、無理に見る義務は無いのです」と。

 もう少し、夢を見させてください…。

[写真:ブルーウェイブ・文:大阪府/Be-Wave]

○参考資料:『本田博子の涙』草莽二十八集[草莽事務局 発行]


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