恋をしようよ


高緊張状態 =ハイ・テンション= でいこう!

 私がSKiのコンサートに出かける日の朝、つい口にしてしまう言葉がある。
 「さぁ〜て、今日も彩子に騙されにいくかぁ〜」。
 この言葉は、菊地彩子に対する、私なりの最高の誉め言葉である。

 私が、[制服向上委員会{以下・SKiと呼ぶ}]に対して求めているものは何か? それはアイドルっぽい可愛らしさ以上の「カッコよさ」、そして「凛々しさ」なのです。
 初期のSKiは、どちらかというと制服を格好よく着こなせる、モデル系のキャラクターが主力でした。しかし時が経つにつれ、SKiはファンさん(c)に対して、普通のアイドルと同じような「可愛らしさ」プラス「愛想の良さ」が求められるようになっていき、この手のキャラは、今では傍流になってきているのです。
 SKiメンバーのいわゆる「可愛らしさ」は、昨今のプレ・アイドル(今や死語だと私は思っている)のような、どうにも甘ったるい、押さえの効いていないものとは違うもので、こういった意味でSKiに対して可愛らしさを求めるのは、正解ではあると思います。
 しかし、今どきカッコよさとか凛々しさなんてものは、他のアイドルでは、なかなかお目にかかることは出来ないということ、そして単に「カッコいい」だけではなく、その中にふと垣間見せる「可愛らしさ」、これが私は好きだということ。
 そのため私は、SKiに対してはずーっと「カッコよさ」「凛々しさ」を持ち、その中に女の子っぽい「可愛らしさ」を見せるキャラ、並びに楽曲を推すことにしているのです。

 そんな私が、三期生第1号として入会し、今のSKiでは少数派の「美少女の凛々しさ」を持ち味にしたメンバーである、菊地彩子を推すようになったのは、当然の帰結といえます。
 彼女に対して、初めて強烈な印象を持ったのは、昨年の夏〔HMV・生活創庫名古屋店〕で行なわれたキャンペーンでのことでした。元来一期生党で、それまでは「〈寿十八番勝負!〉のジャケ写で、後ろに写っていた娘」くらいの印象しかなかったのですが、それが一転して「一体何なんだ、この娘は!」となって、この日一気に名前とキャラを認識してしまったのです。

   博子「昨日しゃべってる時に、彩ちゃんってゲテモノばっかり
      食べてるんですよぅ(笑)。
      何を食べたのか、(ファンの方に)教えてあげてください」
   彩子「ハト,鴨,すずめ,ウサギ,たぬき,熊,鹿…{淡々と並べていく}」
   博子「それを。『おいしかった、おいしかった』って言うんですよ」
    客 「猪は?」
   彩子「{明るく}猪も食べました!」
   博子「すばらしい…、だから背がどんどん伸びるんですよね」(場内笑)
   彩子「無意識の、イジメ…{蚊の鳴くような声で}」
   博子・美香「ごめんねぇー」

 一聴すると馬鹿っぽい、このMC。こうして文章にすると、実にうまいやりとりをしているのが分かる。
 そして、この後の《真夏の祭典》の寸劇において、彼女はたった一人で、ステージ上で必死になって隠れようとする松田ゆかりに対し、あの手この手で揺さぶりをかけていくという、実に7分以上にもわたる見事な応酬劇をやってのけたのです。こいつは、センスのない人では決してできないことであり、それをのほほ〜んとした口調で、平然とやってのけた菊地彩子という娘に対して本当に感心し、同時に深い思い入れを持つようになったのです。しかも彼女は、私が今まで推してきたSKiメンバーとは少し違い、見れば見るほど、知れば知るほど面白くなっていき、そして、よりハマっていってしまう娘だったのです。
 松田ゆかりのように“淡々”ではなく、本田博子のように“瓢々”でもなく。[寿隊] [4人1組] [SKi-P]など、個性の違うそれぞれのユニットごとに、自らの存在を、あるときは溶け込ませるかのように、またあるときは殺すかのように、立ち振る舞うことができる“勘の良さ”。先ほども述べたように、こいつは芸能人にとって非常に重要な、正に天賦の才能といえるものです。
 堂々とした貫禄で歌い上げる『De'LIGHT』『少年よ大志を抱け』、そして『同世代の少女たちへ』。
 その一方で、凛とした美少女の雰囲気で歌う、SKi最高の名曲『ウエディング・ベル』と、その続編ともいうべき『美しいあの出会いと別れの歌』。楽曲のイメージにより、見事なまでに合わせることができる「歌唱」。井上裕紀子の歌声が、どのような楽曲でも【井上裕紀子ワールド】に染め上げてしまう鮮烈な色を持つのに対して、菊地彩子の声は。【それぞれの楽曲の持ち味を、さりげなく引き出す】というのが、最大の特徴であり魅力でしょう。

菊地彩子  ファッションモデルに憧れているということもあってか、撮影会の時には、その場の状況や衣装などで常に違う表情を見せてくれる「フォトジェニックさ」も持ち合わせています。特に〈CAPA〉97年5月号での、これまでに見たことの無い表情には、誰もが驚いたことでしょう。
 このように、10のシチュエーションがあれば、10の顔を私達に見せる彼女。本誌96年12月号で知恵之輪士氏が書いたように、まさしく彼女はSKiきっての“役者”。まるで、光を当てる角度や当てる光の種類によって、まったく違った光線を生み出す“分光器(プリズム)のような娘”なのです。それだけでなく、次に一体どのような表情を見せてくれるのか、どのような魅力を見せてくれるのか、どうしても見たくなってしまう衝動に駆られてしまう“何か”を持っているのですね。まるで、プリズムから分散される光線に含まれる、一条の魔法仕掛けのスペクトルのような何かを…。
 そいつは一体何なのでしょうか。私は、そいつを見極めるために、今日も客席にいるのです。
 でも、いつか彼女が卒業していく日が来ても、そいつの正体は何なのか、ついに最後まで分からない方が楽しいのかも知れません。

 さて、昨今の彼女の姿を見ていると、以前のような、どことなくのほほんとした雰囲気がなくなり、恐ろしく高いテンションでステージに立っているような気がしてなりません。
 見ていると、どうも「私がやらなくちゃ」という観念みたいなものに、取り付かれているようなのです。斉藤美緒子や宮田直美のように、もっと肩の力を抜いてやった方が、ずーっと彼女自身の持ち味が生きるのにと、つい思ってしまいます。
 でも、現在の三期生の、そしてSKiの精神的な支えでもある、自他共に認める負けず嫌いの菊地彩子という娘には、それができないのでしょう。彼女は“役者”ではありますが、そういった意味ではすごく無器用な娘です。だからこそ、私は彼女に対して、思い入れを持つことができるのだと思います。

 7月21日。名古屋でのあの出逢いから、ちょうど一年目のこの日。私は、浜松へと走る車の窓から朝焼けの空をぼんやりと眺めつつ、今日行なわれるステージへと思いを巡らせる。
 「さぁ〜て、今日も彩子に騙されにいくかぁ〜」。
 この言葉は、菊地彩子に対する、私なりの最高の誉め言葉である。

※文中、敬称略で書かせていただきました。

[写真:ブルーウェイブ・文:大阪府/Be-Wave]


97年8月号目次