《BW君のよもやま話 〜これからのユニット戦略とは?〜》
10月に発売されるアルバム〈SKiユニット集vol.2〉の広告に出てきた、謎の新ユニット[SKi-T(すきっと)]が、8月の《ワン・ラブ・プリーチャーズ・コンサート{以下,OLP公演と呼ぶ}》にて初お目見えしました。と同時に、松田,久保,斉藤の3人による[SKi-A(えすけーあい・えーす)]というユニットも新登場し、この日は実に9組のユニット([本田博子]を含む)がステージ上に勢揃いしました。
私自身の感想を言うと、真夏のこまば3連戦で一番面白く見ることができたのは、このOLP公演でした。洋楽ロックをベースとした高橋廣行プロデューサー独自の音楽センスを十二分に活かすには、“制服”に縛られることなく、割合自由なイメージを作れる各々のユニットの方がグッとやりやすいのは当然で、これからのSKiを楽曲面から考えると、ユニットに期待した方が俄然面白くなってくると思います。
しかし、現状では余りにも似たり寄ったりのユニットが多い気がします。これはかなり以前から言われていたことですが、ここへ来てその影響が著しくなってきているのです。
例えば、[ワースト]と[SKi-T]の差異は、私から見るとほとんど無いと言っていいのです。せいぜいワーストでは、久保愛と小林久子が笑いに走っている点。SKi-Tでは、現在のファンさん好みの“ロリっぽさ”が加味されている点だけが、ハッキリと違うと言っていいでしょう。たったこれだけの差異のために、両方のユニットに加入している小林久子や内田絵美,松井陽子は、恐らく2倍近い努力をしているのです。
単純に「見る機会が増えてうれしい」と喜ぶのも結構ですが、何だか違うとは思いませんか?
「お色気担当、足もっと見せてぇー!」コールでおなじみ、人気ナンバー1ユニットの[Hellow]も、この日は今一ついただけませんでした。キャンディーズの『春一番』が、なぜ「新曲」になるのでしょうか。
百歩譲ってキャンディーズをカバーするのはいいとしても、8月に『春一番』はないでしょう…。せめて、『暑中お見舞い申し上げます』ぐらいを選ぶセンスがほしかった。7月の《いじめ追放ミュージカル》でキャンディーズの役柄で出た時(苦笑)に歌ったのを、そのままやっているだけなのです。まぁ、版権の都合もあったのでしょうが、いやしくも「人気ナンバー1ユニットが、そんなことをやっていてはいけないでしょう」と言いたいです。
そして、ここが肝心なのですが、こうして見ていると、「どのユニットも、それぞれの完成度を二の次にしてしまっている」ような気がしてならないのです。本当にこれでいいのでしょうか。
アメリカやヨーロッパでは、いわゆる“ロックフェス”と呼ばれる、複数のバンドが集まってのお祭り感覚のコンサートが頻繁に行なわれています。そこに集まる観客は、ある者はステージに耳を傾け、またある者はビールを飲みながら昼寝をしたりして、皆思い思いのスタイルでコンサートを楽しんでいます。PTAのスタッフは、どうもこのロックフェスのアイドル版をやりたくて仕方がないように思うのです。以前《※1アイドル・スプリング・カーニバル》という、SKi以外にも数々のアイドルを日比谷に集めてイベントをやったことが、それを証明しています。
しかし、現在のSKiメンバーは、今や最高顧問となった松田ゆかりを入れても15人なのです。たったこれだけの持ち駒で、今までどおり山のようにユニットを作ると、いかにメンバーが精一杯の努力をしても各々のユニットを差別化し、なおかつ完成度を高くするのが難しいことは当然です。その結果出てきた、完成度の高くない同じようなユニットを並べて、アイドル版ロックフェスをしても全然意味が無いと私は思います。
ましてや、経験のまだまだ浅い四期生を一日でも早く一本立ちさせるのが、今や一刻の猶予もならないSKiの課題であるのに、二つも三つもユニットに加入させて四期生たちへ余計な負担を強いるのは、いかがなものでしょうか。
ステージを積まなければモノにならないと言う意見もあります。しかし、「経験を積ませる」ということと、「無理にしなくても良いことをやらせる」というのは違います。メンバーを少数精鋭にした(せざるを得なかった?)のならば、ユニットも少数精鋭で行くという考え方にすべきなのです。
誤解されないように書くと、ワーストもSKi-Tも共に良くできています。点数をつけるとしたら、両方とも80点はつけられると思います。でも、これからは「100点をつけられる一つのユニット」を見せるようにしていかなければならないと、私は思うのです。
“プレ・アイドル”と呼ばれた、旧来の思想を持ったアイドル・ファンのために歌うアイドルは、現在では“ライブ・アイドル”と呼ばれるようになっています。この先ライブ・アイドルは、小規模ながらも一定の確立されたマーケットを持つに至るでしょう。そうなれば、そのマーケットを得るがために市場競争が起こってきます。今までどおりに「フリフリの衣装でブリブリの歌を歌わせておけば、何でもいいのだ」という考え方では、もはやダメになってくるでしょう。
これからは、どんなに規模が小さくても、ライブ・アイドルとしてやっていくためには「なんだかんだ言っても、やっぱり○○ちゃんは魅力的だなぁ」とファン以外の皆に言わせる魅力が必要となってきます。
SKiは、ライブ・アイドルグループとしては異例に長い、5年間という歴史とその間に培ってきたイメージ、500曲を超える持ち歌という、どのライブ・アイドルにも無い大きな資産を持っています。2年前、あえて無謀といえるインディーズ戦略を取ってライブ・アイドルへの道を選んだSKiに、今や時代が追いついてきたと言えるのかもしれません。
今こそ、その資産を大いに生かし、ライブ・アイドルの雄としての立場を確保する時でしょう。でも、今までどおりに、「いつもやって来るファンさん」だけしか見ない戦略を続けているのならば、これから出てくるライブ・アイドルたちの攻勢に、あっと言う間にSKiは沈んでしまうことでしょう。もう、この業界でも「そこそこのモノで、十分に商売ができる」時代は終わろうとしているのです。
SKiの顔であった吉成圭子が芸能界を去り、ライブ・アイドルの時代を迎えた今こそが絶好の機会です。個性を持ったユニットを絞り上げ、PTAコミティとIJRの持つ音楽センスを盛り込んだ、どんなライブ・アイドルも太刀打ちできない魅力を持った【完成度の高いユニット】を持つSKiを作り上げる時が来ているのです。
この8月の3連戦で最も印象に残ったこと、それはメンバー自体に「吉成さんが引退した今、そしてメンバーが少なくなった今、私たちがやらないとSKiにはもう先は無い」という危機感が芽生えたこと。そして、できる限りのことをやろうという意志が、ステージの上から私へはっきりと伝わってきたことです。
井上裕紀子の『初恋にサヨウナラ』『Hearts Never Lie』なんかは、今までで一番良かったですし、初めてステージで芯を取る立場に立った小林,内田,松井の3人も、思った以上に見せてくれました。四期生達もまだまだ未熟ながら一生懸命やっていました。
「SKiはやれる。やればやれるのです」。
佐藤産業製のブレザーの胸に光るSKiのエンブレムが、ライブ・アイドルたちの憧れになるということだって、決して夢ではありません。今こそ本当の制服軍団の“底力の見せ所”だと思います。
と同時に、私たちはこういった真摯な姿勢を高く評価し、「いいなぁ」と感じることのできる感性を持つ必要があると思います。そして、彼女らを決して甘やかしたりチヤホヤするのではなく、その感性を持ってしっかりと見守っていくことが、SKiの未来につながるものと思います。
私たちは援助交際をやっているのではなく、【制服向上委員会という ライブ・アイドル】のファンなのですから…。
※文中、敬称略で書かせていただきました。
[写真:埼玉県/コロちゃん,文:大阪府/Be-Wave]
※1 アイドル・スプリング・カーニバル = 1996年5月11日に日比谷野外大音楽堂で行われた、IJR主催のイベント。
SKi,SKi-P,ソロになった望月菜々のほか、ビビアン・スーや村田和美,non2,島田沙羅,森下純菜,水野あおいなどが出演した。
ぐっでぃず アイドルを探せ!(2)
3日前、テレビで〈ニュースステーション〉を見ていたら、「北朝鮮の日本人妻帰国問題」のニュースで、インタビューに応えていた女性の中に[小林久子さん]という名前を見つけた。でも、年齢は60歳を超えてましたけど…。
[副編集長■しろくま☆しゃしょう]
[ 97年9月号目次 ]