last update:98/04/02
水野あおい こまばエミナース で コンサート記念 特集 |
《※1raison d'etre》
読者の皆さんは「生まれ変わって、 別な人間になりたい」と、まじめに考えたことはありますか?
私は、小さい頃からそうだったような気がする。外見ではなく、“こころ”の問題として…。
もう1年になる。あの野音で、そしてビプランシアターで再び、その光景を目にした時、私の中で流れが変わった。
「別れ」の哀しさを意識せざるを得なかったのだ。
3ヶ月後。私は渋谷公会堂前で、身近な人にも原稿をお願いして作ったミニコミ〈※2春になれば〉を配っていた。
これから卒業式だというのに、完成の晴れやかな気持ち。どう考えても矛盾している。もちろん、悲しみを少しでも紛らわせようといった思いもあったことだろう。
しかし、自分のミニコミに込めた思いは、今考えると尋常ではなかった。インターネットのホームページにも上げてあるが、あれは「美雪ちゃんに読まれることで一つの使命を果たした」と言えよう。これから生きていく上で、少しでも指針になればいいなと…。
ところで、美雪ちゃんはどのような思いでSKiのステージに立っていたのだろうか?
「もっと積極的になれば、人生楽しくなるよ。」
人はそんなふうに言う。ありがたいけれど、おせっかいだ。
別に固執しているわけでもない。そんな簡単に変われるものではなかろう。逆に「もっと前に出て活躍してほしい」なんて思ったこともあったが、いつしか自分との共通点を見いだし、いとおしくなってしまった。
結果的に、グループの中に溶け込むことで、むしろ[松本美雪]の存在は明確になった。
そういう生き方もあるのだ。目立つことだけがいいわけではない。
二期生の中の二期生だった…。そんな性格ゆえに、あの時見せた涙がひどく意味を持つように思えてならない。同時に、誰にも分からないのかもしれない。
「芸能界」とは相反する純度。SKiが単なるアイドルグループではないのは、こういったメンバーの存在が大きい。
そこから大切な何かを得られるのだ。当たり前のものなどいらない。
もし、悪魔に魂を売って昔の記憶を自由に削除できたら、気持ちの上でどんなに楽になれるだろうか。「精神汚染」は、つらい。
美雪ちゃんに出逢えたことで、自分の心が少し軽くなったかもしれない。
そして、彼女の優しさはいつまでも心の中で生き続けていくことだろう。
でも、美雪ちゃんとは、もっと違った形で出逢いたかった…。
[カメラと文:論説委員■夢野 雫]
※1 raison d'etre (レゾンデートル) = フランス語で「存在理由」の意。
※2 春になれば = 現在、私のホームページで公開中。
KS3ホームページからも、リンクしています。
[ 97年11月号目次 ]