特集 |
『こちら新宿3丁目』新装記念企画!! SKi 13th ALBUM 『黒い瞳』総評 |
☆編集部員・おすすめの一曲☆
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これから、14枚目、そして15枚目とCDを出していくことになる訳だが、これからもジャケットには気を配って欲しいところである。 内容面だが、レコーディングに関わったメンバーが五人(本田博子・橋本美香・川野朋美・三浦恵里子・秋山文香)と少なかったのが残念である。なんでゆっきいが参加していなかったかが、気になるところである。 |
新旧リーダーと、次代を担う三人に歌わせたということは、このアルバムが二期生・三期生時代から、四期生・五期生時代へのブリッジになるのではないかと思う。 カヴァー曲が四曲入っているのも注目される。『少年少女』と『素直な良い子』は、今や伝説となったユニット、“ミッシェル”のナンバーで、いずれも川野朋美が歌っている。彼女はミッシェルのイメージではないが、彼女の素直なヴォーカルは、これらの曲の新しい解釈に、一つの答えを出していると思う。それにしても『素直な良い子』は、作詞奥山みか、作曲吉田未来と言う、オールドファンには涙が出るようなコンビだ。 『恋するふたり』と『天使のアイス」は、言うまでもなく篠原智子のナンバーだけど、今回は三浦恵里子が歌っている。やはり今のメンバーを見ると、篠原のキャラクターに近いのは彼女しかいないように思えるんだけど、篠原ファンだった皆さんは、一体どう考えているんでしょ。 本田博子の『18才』と『キャンパスのある街』は、ちょうど彼女の年代なありそうなことを歌っている。「SKiに入った時は14才だった彼女も、大人になったんだなあ」と思ってしまう。この二曲は、SKiの本田博子としては集大成になるのではないかと思う。 秋山文香の『TESS』と『さよならへの旅立ち』が、辛い別れを歌っているのに対して、橋本美香の『Air Mail』とSKiの『イルミネーション』は、ハッピーな女の子の気持ちを歌っているようだ。『Air Mail』は、詞・曲ともにさわやかで、JALかANAのCMソングにでもしたくなってしまう。『イルミネーション』は、どことなく松任谷由実の『恋人はサンタクロース』を思わせる。 ところで、このアルバムの最大の魅力は、六曲を占めるKAOさんの詞ではないかと思う。メルヘンチックな『天使のアイス』、シリアスな『TESS』と『さよならへの旅立ち』、ちょっとブルーな『キャンパスのある街』、ハッピーな『Air Mail』と『イルミネーション』…。一枚のアルバムの中で展開される多様な世界に驚かされる。 KAOさんは、私たち“踊り隊”にとっては“教祖”な訳だけど、作詞家としても“SKiワールド”の精神的支柱になっているんじゃないかと思う。 |
ここで注目されるのは、しの[篠原智子]のオリジナルが半分も占めていることだ。9月12日のHMV上野で、文香ちゃんが『さよならへの旅立ち』を歌った時には驚かされた。なにしろ、(※)篠原智子自身も一度しか歌ってないのである。『キャンパスのある街』や『Air mail』もそれほど機会がなかったが、改めて聴き直し「名曲揃いである」と再認識させられた。 音域からして難しいとしても、ソロ活動中に(CDを)出せなかったことが悔やまれる。ただ、篠原智子という存在は、このアルバムの見えないところにしっかりと刻み込まれたのだ。そう思いたい。 一つ指摘しておきたいことがある。コーラスだ。 アルバム〈地球に愛を〉では、アレンジもバランスにも問題があって完成度に今ひとつと感じさせたが、今回はいずれも成功している。曲に彩りを添え、美しい仕上がりが聴いていて快い。 さて、このアルバムには副題に「アイドルの原点」とある。原点とはなんぞや?という疑問はさておき、前作とは対照的にアイドルポップスの流れをくんだ作りになっていると思う。『イルミネーション』は、何となくおニャン子クラブを連想してしまったし、裏のジャケットはまるでCoCoの『Share』みたいだ(笑)。 一方で、『18才』という曲は異色な存在。歌詞には考えさせられる。深い。そして、心が痛くなる。 私たちはみな自分なりの価値基準を持っている。それは絶対的なものでないことも知っている。にもかかわらず、世の中に問題はますます増えている。しかし、もっと素直に多様な価値観を分かり合おう。それができれば人類に未来はある。 この曲はきっと、ひどく抽象化したメッセージを発信しているのだ。『地球に愛を』と対をなすような、あるいは表裏一体とでも言ったらよいだろうか。少しは理想を描くことも大切だ。決して、若者の特権ではない。 いつまでたっても侮れない存在である。>SKi ※ 97年3月9日《篠原智子オフィシャル・ファンクラブ結成式 智★しのアイス》にて。 |
新世代の四期生・五期生のボーカルの曲が半分以上を占めていて、従前から『六連星倶楽部』にも何度か書いたように、“成長した四期生・五期生”の姿を曲から感じ取ることが出来る。 三浦恵里子は、ついこの間SKiに入ったかと思えば、今ではレコーディングに参加するまでに高い実力を身に付け、CDで歌声が収録されているのだから、これは快挙と言えるだろう。もちろんながら、同じことが五期生の秋山文香にも言えることである。彼女に至っては、まだ一年も経っていないのだから…。その意味ではスタッフから高く評価されているのであろう。 私が思うには、篠原智子ナンバーが多いのは少しながら気になったものの、収録されている曲すべてが、すごく素晴らしい出来となっている。それに、全体で特に評価している点は、P会報(VOL.30)で、ほとんどのメンバーがなかなかうまく行かなくて何回も録り直したなどと書いてあったが、その文面の中には各メンバーの頑張り(歌に対する取り組み)が見えてくる点である。最初からうまく歌える人間はいないのだから(少なくとも私は、一回のレコーディングでOKが出た歌手の名を聞いたことがない)、その中でどのように取り組んでCDに収めるか、そして、その時に経験したことを今後にどう生かせるかが重要だと私は考えている。今までに発売されたCDも、そういった点では同様だと思うが、今回の『黒い瞳』では特にそう感じたのである。 一曲目の『少年少女』から、十曲目の『イルミネーション』までを何回か聴いていくうちに、共通して思ったことが三つある。まず一つ目は“安心感を感じること”。これは、魅力的な声質を持ったメンバーを揃えたのが最大の理由であるが、さらにすべての曲において、声質の魅力が最大限に生かされている。だからこそ安心して聴くことができる。 二つ目は“女の子らしい曲でまとまっている”こと。最後に三つ目は“アイドルファン以外にも評価が高い”である。最近私は『黒い瞳』ばかり聴いている。そこで、アイドルファンでない知人数人に聴かせてみると、予想以上に評価が高かったのである。この結果に、私はすごくうれしくなったのは言うまでもない。アイドルファン以外にも自らの魅力を分かってもらえる意味でも、制服向上委員会は“メッセージを伝えるアイドル”なのであろう。 これからもこのように、私たちファンさんたちを魅了させてくれる歌を出していってほしいと思う。 |
全体として、〈地球に愛を〉の時のような“飛び抜けた”楽曲はないが、曲目とヴォーカルの顔触れからして、「安心して聴くことができる」アルバムといえよう。 注目点は、龍之進・鈴之助といったおなじみの作詞家に加え、振り付けのKAO(和田 香織)先生も曲づくりに参加していることだ。『TESS』『Air mail』『さよならへの旅立ち』のような、色とりどりのシチュエーションは、恋愛経験豊富(であろう…)な女性でなければ、おそらく書けない歌詞だろう(メンバーには、ちょっと若すぎて無理)。 『少年少女』『18才』『天使のアイス』は等身大の恋愛模様。対して、先に挙げた3曲は、ちょっと背伸びした女の子の恋愛模様が描かれている。メンバーと同様に幅広い楽曲は、それぞれのヴォーカルをとる女の子にピッタリとフィットしているように思う。 最後の『イルミネーション』は、今までのSKiにあるようで無かった、クリスマス・ソング。これからの季節、原宿から青山辺りにかけて「こんな風景が広がるのかなぁ」と想像しながら聴くのも一興かも(「わびしくなるだけ」という独り者の声も、聞こえてはくるが…)。 ともあれ、この「かわいくて、かっこいい」一枚が、皆さんの“愛聴盤”になることを祈りたい。 |
川野朋美・三浦恵里子・秋山文香ら、“これからのSKiを担っていくメンバーたちの勢い”がアルバムからストレートに出ている点に、私は好感を持つ。そして、この三人のフレッシュながら、まだまだ完全とは言えない楽曲群の中に、本田博子・橋本美香というベテラン二人の楽曲を入れ、アルバム全体の構成をピシリと締めて、作品として完成させる。これはかつての名盤『傷だらけの青春』と同じプロデュース手法であり、ライブ・アイドルグループ『制服向上委員会』の“歌の系統譜”を、ファンさんたちに示したといえるものだ。 ただし『傷だらけの青春』の頃とは違い、今のSKiを取り巻く現状は非常に厳しい。“篠原智子ナンバー”という、過去の遺産を引っ張り出してきたのは、最初にこのアルバムをプロデュースするはずであったサエキけんぞう氏なのか、それとも、その計画が白紙となってからの方針なのかは私には分からないが、資金もアイディアも豊富だった時代に作られた、これらの“アイドル”らしさ一杯”の楽曲群によって、なんとか今回のリリースが救われた感がある。「手持ちの材料で、精一杯やってくれたな」と、感じさせるアルバムである。 そんな訳で、アルバムの出来としては、「『傷だらけの青春』よりは若干落ちるかな…」、とは思うが、少なくとも昨年リリースの『地球に愛を』よりも、数段出来が上だ。まあよくやったと言えるであろう。 『モーニング娘。』が大ブレイクした98年、アイドルという存在が“陰にこもる”時代は完全に終わった。『ライブアイドル』と言う存在の意義が崩壊しようとしている現在、これまでのやり方では(どこの団体でもそうだが)ますますジリ貧となっていくのは確実であろう。 そんな中で来年以降、SKiは音楽面で一体どういう方向を見せていくのであろうか。橋本美香プロデュースによる『“M”プロジェクト』でデビューさせるグループとの整合性(これは音楽性だけではなく、全ての面において)はどうしていくのか。アイドルでありながら、実はこれまで、反アイドル的立場を取ってきた“制服向上委員会”は、“アイドル性”を音楽的な面で完全に捨て去ってしまうのか…。まあ、色々な意味で大きく変わるはずだ。 もはや制服向上委員会は、“ライブ・アイドル”という肩書きを捨てる時期に来ているのかも知れない…。 |