last update:1999/12/08
◆ライブ・レポート◆
鬼才!灰野敬二と美香&文香の激闘TALK
at SKiレッスンルーム 1999/ 7/17(SAT) 19:00〜
私がこのイベントに申し込んだのは、美香ちゃん、文香ちゃんと好きなメンバーが揃って出演するからで、灰野敬二という人については全く知らなかった。
灰野氏は、PTAコミティの高橋P氏との古くからの友人だそうで、一緒にバンドを組んでいたこともあったそうだ。
なんでも、フランス公演を5回もやっているというので、多分「知る人ぞ知る」という存在の人なのだろう。
それにしても、この灰野氏といい、PANTA氏といい、高橋氏の人脈は相当に広そうだ。
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撮影/ホーカー・テンペスト
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この日はFC会員以外にも、灰野氏のファンと思われる人が何人か来ていたので、美香ちゃんがSKiについて説明した。
「私たちは、“清く正しく美しく”を活動方針にしているグループです」。と言うと、意地の悪いファンどもが恒例の「え〜!」の大合唱。
美香ちゃんはちょっと困ったようだったけど、めげずに説明をまた続けると、また「え〜!」の声が起きるといった具合で、お約束とは言えちょっとかわいそうな気がした。もっとも、かく言う私が先頭を切ってやっているのだから、本当に悪い野郎だ。
やがて灰野氏が登場。私はてっきりギターの弾き語りでもやるのかと思っていたら、全く見たこともない楽器を演奏し始めた。
形はアコーディオンみたいで、ペダルを手で回し、弦を指で押さえて音階を取るようだ。音はシンセサイザーのようだった。
音楽はとにかく独特なもので、私は、インドかアラブのような音楽だと思ったが、灰野氏の言によるとヨーロッパの中世の音楽がベースになっているのだそうだ。ヴォーカルもついていたが、歌詞はよく聞き取れなかった。
演奏が終わった後は3人によるトーク。とは言っても、質問するのは洋楽やジャズに詳しい美香ちゃんがほとんどで、文香ちゃんは聞き役に回っていた。
灰野氏が最初に好きになったのはビートルズで、一番好きだったのはドアーズだったらしい。
日本の音楽については、モノマネばかりで面白くないそうだ。
音楽は何でも原点にさかのぼるべきで、ジャズも1920年代のものが一番いいと言っていた。
確かに灰野氏の音楽はモノマネではなく、オリジナリティに溢れていると思った。ただ、難解な感じがするので、ポピュラリティーを得ることはないだろう。もっとも、このポピュラリティーこそがモノマネにつながっていくのだろうけど。
私が一番驚いたのは、灰野氏が“成田空港反対闘争”にも参加していたということだ。
闘争の拠点になった三里塚(千葉県成田市内)にも行ったことがあるらしい。
今の日本では、不況でもストライキやデモ行進は起きず、自殺者ばかりが増えている。
成田闘争が良かったとは思えないけど、今の日本人からは“抵抗の精神”が消えてしまった。灰野氏は当時を振り返って「だまされた」と言っていたけど、自殺するよりはよっぽどいいのではないかと思う。
美香ちゃんは、さすが千葉県民だけあって「三里塚」という場所は知っていたようだけど、成田闘争のことは知らないらしい。彼女の年代なら、当然といえば当然だ。これも“時の流れに”(c)ってところか。
それはともかく、灰野氏は高校を中退してから音楽一筋30年らしいので、若い二人にはいい刺激になったのではないか。
「音楽は技術より魂でやるものだ」。
「自分が本当に音楽が好きなのか、好きになったつもりなのか、ここに大きな差がある」。
灰野氏の言葉には重みがあった。
[論説委員/本間寛]
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