last update:2000/04/01
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SKi 17th ALBUM 『音楽は経済のドレイじゃない!』 1999/11/ 1 発売
◎ 1999
最近、あまりパッとしないSKiの新曲が多いなかで、特に気に入っている。
『地球に愛を』や『今こそ立ち上がれ』と同様のメッセージソングで、歌詞を見てみると最近の社会の現実に関することが書かれており、私としては非常に心が打たれる。
また、どことなく、この曲のメロディ自体も気に入っている。
◎ 初恋の並木路
またまた、えりりんボーカルの曲が収録されて、えりりんイチ推しの私としては超〜ウレシイといった感じですけれども…。
この曲のテーマはタイトルから分かる通り“初恋”ですが、中学二年生の時の私自身の初恋の思い出が聴くたびによみがえってくる感じがします。
◎ 引っ越し
えりりんと舞香ちゃんがボーカルを担当。“引っ越し”のことを歌ったことだけど、最近はニュースなどで「家族全体のコミュニケーションが減っている」ということや、「家族崩壊」といった悲しい話を聞くけれど、私自身の勝手な解釈ですが、曲の内容を聴いてみると、家族全体のほのぼのとした雰囲気が感じられ、私もそんな幸せな気分にさせてしまう気がします。
[愛知県/杉浦嘉信]
一年に一度、年末近くに出されるSKiとしてのアルバムは、その年の『制服向上委員会』のカラーをそのまま形にしたモノで、私自身、毎回リリースを楽しみにしているモノである。
この『音楽は経済のドレイじゃない!』というアルバム。
私は、2曲目に収録されている『1999』という楽曲に、現在のSKiのすべてが表れていると思う。
P会報Vol.36の“アルバムレビュー”で橋本美香が語っているように、この曲は『今こそ立ち上がれ』『Forever Young』に続く「SKiからのメッセージソング」路線の第三弾と言えるモノだ。
私は勝手に“高橋廣行流・ロック路線”と呼んでいるこの路線の三曲には、一つの大きな特徴がある。
それは、SKiを知ってから比較的日の浅いファンさん、いわゆる「薄い客」の多くはこの曲を支持しているのに対し、制服向上委員会の古くからのファンさん、とりわけファンの中でも「有名客」と呼ばれる人たちは、この曲を否定している人が多い事だ。
その主な理由は「メッセージがそのまますぎて、聴いていてかえって引いてしまう」「お前たちがそんな偉そうなメッセージを言えるのか。ただの自己満足だ」という理由によるものだ。
率直に言って、私も今ひとつこの路線は好みではない。
『今こそ立ち上がれ』を初めて聴いたときなんか「お前らが先に立ち上がれよ」と、まるでジミー大西のギャグのような言葉が口に出たくらいだった。
しかし、今やSKiがこのまま形をとどめて行くためには、この路線を認めざるを得ないのだ。なぜか。
そもそもこの路線を取った理由というのは、現時点の制服向上委員会の持つポテンシャルでは、この「ロック路線」の楽曲でいくしか、もはや活路を見いだす方法がないからなのである。
かつてPANTA氏は、ストレートなロックを意識して書いた曲が、自分の意に反してフュージョンぽいサウンドに仕上げられた時に「この曲はロックなんだから、ユニゾンでドン!ってやっちゃえばいいと思った」。と感じたという。
私はこのことを知った時「あ、これなんだな。今の高橋Pの考え方って」。と思った。
従来のハーモニーを駆使した初中期の制服向上委員会の楽曲群は、四人一組の楽曲に代表されるような高度なハーモニーを駆使したモノが多く、これから先も芸能界で本気で食っていく心意気を持っていた当時の在籍メンバー達は、それを難なくこなすだけの能力を持っていたのである。
そしてファンさんたちは、その流麗さに魅かれ、SKiのファンになったのである。
だが、芸能界への通り道であることを否定する方針をとっていったSKiには、時がたつにつれて、それだけの能力を備えた人材がだんだんといなくなってしまったのである。
SKi最大の売り物であった「流麗なハーモニー」を成立させていくのも段々と難しくなっていき、ハーモニーからユニゾン・コーラスへと(私に言わせると)レベルが下がっていったのである。
しかしユニゾン・コーラスでも、楽曲での聞き所を持たせなくてはならない。
そこで、ヴォーカル(音の)のパワーで押せる「ストレートなロック」路線を採用することにしたのであろうと私は考える。
もちろん「高橋Pがもっとも慣れ親しんでいる音楽」ということ。「もはやどんなことがあっても、ある一定数のファンは逃げることはない」との読み(自信&おごり)がバックボーンについていることも、この路線に踏み切った理由であろう。
そんなわけでこの「ロック路線」は、間違いなくこれからの制服向上委員会の根幹となって行くであろうと思う。
四人一組が解散し、静寂向上委員会がもはや事実上機能していないと言う事実は、まさにそれを証明しているのだ。
(とはいえ、これまでやってきた「アイドル路線」を否定することは出来ない。だから「三浦恵里子」と言う「保険」をかけているのだ)。
私は、ロック路線をやるなとは言わない。
古いモノを捨てていきエボリューションしていくのも、表現する者としてはそれはそれで一つの行き方であるからだ。
ただし、それが完成したそのときに、SKiの発するメッセージに対して真摯に耳を傾けてくれる人たちが果たしてどれだけ存在するのであろうか。
これまで応援してきたファンさんたちは、進化したSKiに対しても、今まで通りに深い愛情を注ぎ込んでくれるのであろうか。
この事を念頭に置いて、これからの歩を進めて欲しいと思うのです。
最後に、アルバム各曲の批評を。
楽曲として良くできているのは、M2「1999」M6「恋は不思議」の二曲。
「1999」は、「ロック路線」の3曲の中では、一番良くできた曲です。
この曲については賛否両論ありますが、単純に「かっこいい」と理由だけで、私は認めます。
「恋は不思議」こいつはこのアルバムの中では一番のおすすめ。ほんと、楽しくなっちゃう曲です。
従来のエセ・キャンディーズ路線の楽曲よりも、ずっとこっちの方が良いです。
「どうしてかな」は、サビの部分で、突然メジャーコードに変調するのがなんか妙。それ以外はOK。
あと、秋山文香のヴォーカルは、「さよならへの旅立ち」のような無茶をしなければ(笑)、十分聴けるレベルに達したことはおおいに誉めるべきでしょう。
「初恋の並木路」。「爽やかな風と」という出だしのフレーズを聴いたとたん「まんま篠原智子だぁー!」。
三浦恵里子は、吉成圭子ナンバーを歌うと、歌声の陰に「けーこたん」を感じてしまうし、篠原智子の曲だと「しのさんの陰」が、ちらついてしまうんですよねー。
えりりんの弱点は、スローテンポの曲が今ひとつ弱いということと、明確な「えりりんカラー」が、楽曲面では以外と打ち出せていないことだどいうことを認識しました。
「最後のKiss」もったいない。類型的とはいえ、せっかく美香先輩からいい詞をもらったのだから、もっと感情を上手に表現して歌って欲しかった。寄合歩は淡々と歌う、松田ゆかり系統の楽曲は上手いのですが。“恋愛感情”ってのは、寄合さんの苦手な科目なのかなぁ…。彼女ならばきっと出来ると思うのだが。
「引っ越し」BPGらしく、明るく歌っている点が笑えるのだが(苦笑)。
音が分厚くなったこと、ジャケ写が安っぽくなくなったこと。あと、秋山文香のヴォーカルが『さよならへの旅立ち』のような無茶をしなければ(とはいえ、この曲でのサビ部分での絶叫は、今や彼女自身のお家芸になってしまっているので、これはこれでイイカナと、最近思っている)、十分に聴けるレベルに達していることを確認出来たのが、良かった点。
橋本・秋山以外のヴォーカルが未だにまだまだな点(特に三浦・寄合のヴォーカルは、もう一皮むけて欲しい)。そして何より、高橋Pの独りよがり度が色濃くなってきた点が、一番の難点であったと思う。
# 文中、敬称略で書かせていただきました。
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