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☆ ポエム ☆

愛の指定席 〜秋山文香ソロライブ


僕は公演のチケットを保存しておくことは滅多にしない。
理由はチケットはあくまでその舞台までの切符であり目的地に着いたら不要だと思うから。
でも、手元に一枚だけ残っている。
それは彼女への切符。
目的地にたどり着いたことを確かめたいから?
それとも僕のヴォワイヤージュはまだ終点までの道程を残しているから?
本当は愛することの出発に間に合えたから捨てられないんだ。
この日、秋山文香は、一人でステージに立った。
白いワンピースドレスが舞台と静謐なコントラストを放っている。
一夜限りの夢の結晶は彼女の想いを一定の規則で配列していたのかな。
でもそんな結晶がこぼれ落ちる流星を追っていた僕がいたことも確かだったんだよ。
前半は彼女のMCを中心に曲が構成されていた。
一度はSKiを卒業したものの今年の春に復帰したまでの「彼女の旅」を語る。
でもMCが途絶える。沈黙が支配する。重い沈黙とは思わなかった。
それは、彼女が自信を持って語ろうとしていたから。
言葉より語るもの、それは文香のトラベルバックに積み込まれた誠意だったのかな。
時に人は寡黙な過去に誠実になる。
でも、沈黙が彼女を包み込むたびにトラベルバックの中身を捨てていく明るさを感じ取れたんだ。
後半になって美香&梢が応援でステージに立つ。
秋山文香
「新年のごあいさつ」2003/01/05 LR
撮影/ブルーウェイブ

二人とも泣いていた。何でだろう。
文香の誠実にまた明るい灯火が揺れる。
氷解していく結晶は流星となって僕のヴォワイヤージュの道標になっていった。
天体のかけら。文香の誠実。そして文香の愛。
新しいトラベルバックに詰め込んだ2時間は意外にも軽かったよ。
この一夜から。
発車する君と僕との指定座席にハンカチーフをそっと置いて。
二人だけの灯火が宿す未来はチケットに書かれてある目的地と違うかもしれないけど。
残してあるから。
流れた星のかけらをトラベルバックから取り出してハンカチーフに包んだら。
掌に染みる冷たさがぬくもりに変わるまで握っているね。

[東京都/クロ]



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