偶然に知って耳にした、私の「初めてのSKi」
〜アルバム『世界・自由・アメリカ』を聴いて〜
文:なおた(福岡県北九州市在住)
■不意を突かれた、SKiとの「出逢い」
制服向上委員会(以下、SKi)は、活動の初期に何度か雑誌のグラビアで目にしたほかは、「名前だけは知ってた」という程度で、あと、グラビアモデルとしての諸岡なみ子さんの印象が強かったことが記憶にあったぐらいか。私のなかではその後、完全に「そんなグループがあったなぁ。そういえば」ぐらいのものだった。
そんなSKiを思いがけないかたちで再び「知った」のは、去年の1月から2月にかけてだった。米国ブッシュ政権がイラクに対する戦争への圧力を強め、世界の各地で大規模な反戦デモが行なわれた。
そのころ、東京で「World Peace Now」という大規模な反戦イベントがあることを知り、ある日、その告知の情報をなにげに見ていた。すると、出演者に「頭脳警察」で名を知られたPANTAの名前の横に“with SKi(制服向上委員会)”とあったのを見て、「えええっ???」と私は思わず声を上げた。見間違いかと思ってもう一度見直した。……確かにそこには、PANTAとともにSKiの名があった。
その瞬間から私のなかで渦巻いたのが「なぜ?」の嵐(笑)である。PANTAが「World Peace Now」のようなイベントに出演することは、多少でも彼を知る人にとっては別段驚くことでもない。問題はSKiだ。
まず:
1、現在もグループが「健在」であることへの率直な驚き。
2、アイドルグループたる「SKiが」、「PANTAと共演」で「反戦イベントに出演」することへの意外さ。
三題話ではないが、この3つの要素がどうして結びつくのか???何で???というクラクラした感覚を私は感じた。
そのめくるめく驚きと意外性が、SKiそのものをもっと知りたいという欲求につながっていくのは、それからもう少しあと―去年の夏だ。まずはSKiの「音」を聴きたかった。そのころになると、アルバム『世界・自由・アメリカ』の発売予告が公式ウェブサイトに出ており、『SKi-2-the Best』とどっちを先に聴こうか迷った。結局、「最新」の音から聴こうと思い、『世界・自由・アメリカ』が、私にとって「初めてのSKi」になった。
■『世界・自由・アメリカ』を聴いて
前振りはこのぐらいにして、このアルバムの感想に入る。
本作を聴いて、私には、RCサクセションの『カバーズ』(1988年)や、Mr.Childrenの『深海』(1996年)、『BOLERO』(1997年)といったアルバムが思い浮かんできた。いずれも社会的なメッセージを含んだ曲が多く、グループのそれまでの音とは違った作りになっている。本作を聴いて、以上のような作品を直ちに連想したのも、我ながら不思議である。
私自身はまだ、本作と『SKi-2-the Best』しか聴いたことがないくせに言うのも何だが、「評価が分かれるアルバムかな?」という印象を受ける。「路線」的な位置づけにちょっと戸惑うファンもいらっしゃるのではないかと思うが、如何だろうか。
SKiの歌にはメッセージ性のある歌も多いとのことだが、「アイドルグループの音」で、広い範囲の社会的テーマ(野生動物保護から反戦まで)を「料理」しようという試みそのものが、「アイドルがそんな歌など歌いっこない」という、私の「暗黙の前提」に揺さぶりをかける。この耳で聴いているのは、まぎれもなく少女たちの静かで、キュートな歌声なのだが、歌っていることには「直球の主張」がある―そのギャップに初めは戸惑い、翻弄され、聴き込むうちになじんでいくような、そんな印象をもつのだ。以下、各曲の感想というかたちで書いてみる。
ALIVE…第一印象は大事で、この曲を聴いて「ああ、このCDを買って良かった」と思った。「私たち人間にとって 良いか悪いかなんて 関係ないよ〜」と盛り上がる部分なんか、聴いてると何かしらホッとするというか、「そうだよねー。」と言葉を返したくなる感じです。
時代はサーカスの象に乗って…「戦争と戦争の間に 私たちはいる それを忘れることはない」この曲の冒頭のフレーズとともに、効いてくるというか、共感できる曲ですね。
THE WATER IS WIDE…原曲がイギリス民謡とのことだが、橋本美香さんのヴォーカルをしみじみと聴ける曲。
ディゼール…知り合いに(東京ならば当の「ディーゼル規制」で影響を受けているであろう)トラック運転手がいて、つい彼の顔が浮かぶ。彼がこの歌を聴けばどう感じるのだろうかとちょっと思ったりした。
戦争は知らない…元々はフォーク・クルセダーズ(北山修・加藤和彦・はしだのりひこ)の持ち歌だが、みごとに「SKiの歌」になっている。この世界はやはり「野郎」では出せない。
レッドリスト…伶奈さんと真冬ちゃんのヴォーカルの取り合わせが実によい。(ところで、どちらが真冬ちゃんの声なのか???)
ディポーティーズ…男女間の断絶を歌っているようでもあり、また、社会的なメッセージを微妙に含んでもいるようにも読める詞。もともとウディ・ガスリーの曲だそうだが、ウディといい、寺山修司といい、選曲のセンスがニクイ。
アメリカ…詞のテーマへのSKiの挑戦がビシビシ伝わってくる。だが、次トラックの『World Peace Now』と同様、最後で「オヤジ的な憤懣」の表明が鼻についてしまうのはどうも(まるで作詞者の『地』が出てしまってるようだ)。「若者たちは・・・・」と歌ったとたん、この詞の視点が「若者」の目線ではなく、オヤジ的なものであることが明らかとなってしまうからだ。
World Peace Now…曲じたいはアンセムになりうるメロディをもつ、いい曲だと思う。しかし、問題は詞だろう。『アメリカ』と同じく、「若者たち・・・」と歌った時点でオヤジの高みからの説教になってしまうから(私は「聴こえるか世界の民よ!」云々の箇所よりもむしろ、この部分のほうがじつに鼻についてしまう)。「戦争に反対する曲なのに、なぜ団塊の世代に対する弾劾なのか…」という疑問には、この曲が反戦イベントたる「World Peace Now」で披露されたことがカギになると思うが、この点を詳しく展開すると長くなる(それだけで独立した文章が書けそうだ)ので省略。個人的に好きな曲ではあるのだが、後味の悪さは残る。
世界・自由・アメリカ…「9.11」とともに、アメリカ流の「自由」は、あのような振る舞いへと暗転した。この現実は他人事ではすまされない―シンプルな詞のなかに、私はそのようなメッセージを感じた。アルバムのテーマ(「世界を支配する(?)アメリカ」)に即した曲のなかでは、最もいい曲だと思う。
曲によっては厳しい評価をしたが、アレンジ的にはシンプルかつアクースティックな音で、これは正解だろう。ヴォーカルが前面に引きだされ、「静かに」聴けるアルバムに仕上がっている(のちに『SKi-2-the Best』を参照しつつ聴き返して、このアルバムのカラーがよりはっきりと感じられるように思えた)。
また、アイドルグループの作品にしては、実に「重い」テーマを扱ったものだなあと思うが(SKiだからできるという側面もあるか)、満点とまでは言えないにしても、その挑戦ぶりには拍手を送りたい。
私自身は九州(福岡県)に住んでて、ステージを見ることはなかなか叶わない[距離の問題<財布の問題×many times(泣)]が、これからも可能な限り、彼女たちの曲を聴き、彼女たちを応援していきたい。そしていつかはぜひライヴで観たい・聴きたいと願っている。
(なおた・2004年1月17日脱稿)
《SKiのサマーキャンプ'03》山中湖__
撮影/やまのむぎふみ__
ぐっでいず
1月公演で、4人1組の「自由に生きよう」が歌われた。この日、久美子ちゃんが病気でお休みなので、以前メンバーだった梢ちゃんが代役。なぜか「ヤング」と書かれた札をつけている(爆)。一体なんだったのか、謎です。ある人は「聞いてはいけないこと」と言うし、十分「若い」と思うんだけど…
今でも制服を着るのが好きで、それで友だちの家に行ったらしい。美香さんに「そういう趣味があったんだ」と言われていた(笑)。
[編集委員◆ゆめのしずく]