last update:1998/08/12
特集 |
98/ 5/ 5 日比谷野音に見る、 SKi新世代メンバー徹底批評 |
BY 山野麦文(大阪府) |
続いて、五期生たちへと話題を移そう。
メインヴォーカルを取ったということに関しては、五期生の秋山文香が相当頑張った。
『オレンジ』『素直なよい子』『恋のエンジェル』『(旧)青春ラプソディ』『De'light』。サブヴォーカルとしても、相当の曲数で出てきた。
彼女は声にパンチがある。また音の抜き方もいい。音程も安定していて聞ける。ただ初めてステージでメインに立ったということ、ましてこれだけの楽曲を一人でやるのだから、緊張しているのが当たり前なのだが、もう表情がコチコチであった。
『De'light』ではそれが幸いしたが、『恋のエンジェル』は逆に損をした。旧ミッシェル系統の曲は、歌声に陰影がついたヴォーカルでないと魅力が出せない。それをサビの部分を声を張り上げて歌ったのには興ざめした。
この辺がまだまだ経験の浅いところだ。ステージに慣れてきたころに、初めて彼女の本当の魅力が出てくるのであろう。その時が楽しみだ。
会場に掲げられていた「かっとばせ! 秋山!」の横断幕には「オイオイ、ここは福岡ドームかい…」と笑ったが、これは秋山文香の“はじけたキャラクター”を十分理解しているファンさんたちの大きな期待が込められた、なかなかもって見事なフレーズである。この言葉どおり、五期生最年長として、そして即戦力として、ダイエーホークス・秋山選手ばりの「ホームラン級の魅力」をかっ飛ばせたらなと、私は思う。
“ゆみみ”こと久川由美子のソロ・ヴォーカルは一曲だけ。『小さな生命』を歌ったのだが、かつての白石桃子あたりを連想させる、甘々なヴォーカルで、こいつがイケる。
この甘ったれたヴォーカルを、聴衆の心をかき立てるようにして、もっと意識して歌えるようになれば、魅力がグンと増すであろう。
ただし、歌唱はまだまだ。中盤になってきたら音程がフラフラになってしまっていた。ここはまだまだ要レッスン。彼女ならば、レッスンさえ積めば十分克服できるであろう。
それより先に、「表情を作ること」を心がけてほしい。瞳の表情が固くては、せっかくの甘〜いヴォーカルの魅力が半減してしまうからだ。とはいえ、13歳という年齢を考えたら、実によくやったといえる。
メンバー最年少の小田さおりは、ソロは無し。彼女のMCでの喋り声は12歳とは思えない迫力があるとは聞いていたが、ここまですごいとは…(笑)。
ただ、全体的に彼女はどうも元気がなかった気がする。とりあえず、次回の課題は「歌唱や振り付けの基本的な技術を磨くこと」。そして「自らの魅力」を見つけることであろう。
これは新加入メンバーの小野聖美・波平槙子に対しても言えることである。
最後に全体を通しての感想だが、「歌唱」とか「振り付け」という技術的な点は、ほとんどの新世代メンバーが、私が思っていた以上にできていて、少なくとも落第点と言える者は一人もいなかった。主力メンバーの大半がステージを去り、経験の浅いメンバーを立たせることによって、「見るに耐えないほどのひどいモノを見せられるのではないか…」と心配していたのであるが、その点では一安心だ。
だが、同じステージに立つ本田博子や橋本美香、井上裕紀子らの姿と見比べてみると、やはりまだ格段の差があり、一言でいえば「一軍と一軍半の差が歴然!」といったところか。
本田博子の、それはそれは元気なMCでの張りきりよう。今までのキュートさにプラスして、新曲『じゃぁ〜 まぁ〜 いっかっ!』で小悪魔的なかわいらしさまでも、身に付けてしまった橋本美香。時を追うごとに磨ぎ澄まされていくような、井上裕紀子のヴォーカル…。
三人とも、自らの他の誰にも持ちえない「それぞれの魅力」をステージ上で全開にしてぶつけて来た。そしてそこには、我々「聴衆を楽しませよう」という気持ちが、十二分にこもっていたのである。
これこそが、私たちの心を揺り動かすライブ・アイドルの、いや歌や演技、踊りなどの形で表現する者たちすべての、基本的な精神といえる一番大切なものなのである。
今回の新世代メンバーたちは、ステージで与えられた任務をこなすことに精一杯で、聴衆を楽しませようとするところにまで気持ちが回らなかったように思う。見ていて、これが一番残念であった。
彼女たちへの最大の課題は、毎日の厳しいレッスンで獲得した、メンバーそれぞれが持つ魅力で、会場にいるすべての聴衆を楽しませようとする気持ちを持つことである。これができてこそ初めて、「制服向上委員会は、(新世代のメンバーへと)世代を交代した」と言えるのである。
6月・7月、そして8月と次々にステージは行なわれる。6・7月は演劇、8月はコンサートと若干内容が違うが、基本的な精神は一緒だ。
私はこの夏、彼女ら新世代のメンバーたちが、ライブ・アイドルとしての精神を身に付け、そして大きくブレイクしていくことを心から願っている。そして次号ではぜひ、その成長ぶりを記したいと願う。
私がこの日見た光景。
FC撮影会の時、小野聖美・波平槙子と手をつないで、舞台裏へ戻っていった三浦恵里子・寄合歩…。
ステージの袖で久川由美子と「あぁでもない、こうでもない」と話しながら、ステージ上で踊るフロントメンバーのステップに合わせ、自らもステップを踏んでいた秋山文香…。
どうやら手応えはありそうだ。
♯文中に記したメンバーのセリフは、読みやすくするため、意味を変えず一部リライトしております。
そのため、実際にメンバーが話した言葉とは多少違いますので、ご了承ください。
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