last update:1999/04/29◇ 編集部のある街からのコラム ◇
That's Dane 〜山野・BWの使えないお話〜
★井上裕紀子騒動について。
やっぱり、この事について触れない訳にはいかない。
「もう、放っておけよ」と思う読者の方は多いと思うし、また現実問題としてそうせざるを得ないのではあるが、やっぱりこのスキャンダル(そう、スキャンダルなのだ)を、このまま「無かったこと」として片づけてしまうのはいかがなものかと私は思うので、ここで一言書かせていただく。
率直に言って、私のような古株のアイドルファンなら、この程度のことならば笑って済ませられる程の“免疫”は出来ている。高井麻巳子や二階堂ゆかりの騒動を目の当りにした私に言わせれば、「またか」という感じである。また、ほとんどのファンさんもそうであろう。
だいいち現在は、安室奈美恵や雛形あきこあたりを見れば分かるように、アイドル(女性タレント)の結婚イコール、アイドル性(タレントとしての商品性)の終焉という時代ではない。
だが今回の騒動を笑ってすませてしまう前に、ここでひとつ考えなくてはならないことがあると思う。
私は、井上裕紀子とPTAコミティとの関係が、昨年よりすっかり険悪な物になっていることは、SKiの事情通たちから伝え聞き、知っていた。
1月16日の『ごあいさつ』の質問コーナーでの「最近よく聞く音楽は?」と言う質問に対しての井上裕紀子の答えは「ミッション」であった。PTAコミティのプロデュース方針に対しての、あてこするかのような回答が、お互いの冷え切った関係をものの見事に物語っている。
そんなこともあって、2月21日に渋谷公会堂で、井上裕紀子の入籍・懐妊を告知する張り紙を見たときも、そう大きなショックは受けなかった。
だが、呆れた。呆れ果てた。これをなんと言ったらいいのか言葉が見つからなかった。
頭をフル回転させて、ようやく見つけた言葉が「そこまでやるかあ…」であった。
この当時彼女は、後日行なわれる『お別れ会』に参加する意向を持っていたという。
このことについて、ファンさんたちの間で様々な論議が起こった。
「どのツラさげて出るつもりなんだ。もう来なくていい」。
「いや、それでは後味が悪い。ちゃんとみんなの前で報告すべきだ。そしたら祝ってあげよう」。
私は「まず出ることはないだろう」と予想していた。もし彼女が参加するとなったら、ファンさんたちも井上裕紀子当人も、お互いに会場でどんな顔すりゃいいか分からないではないか。
しかし同時に心の隅で「この予想、外れて欲しい。やっぱり、みんなの前で自分がしでかしたことについて詫びを入れて欲しいな」とも思っていた。
そうしてくれれば、心のどこかで一応は(とは言えないか…)区切りをつけることが出来る。
何よりもそうすることが、これまでアイドルとしての井上裕紀子を応援してきた者たちへの最低限の礼儀ではないか。たとえそれが彼女にとって、針のムシロに座ることになったとしてもだ。
そして私は井上裕紀子が持ちえるプロ意識。南少時代から培ってきた彼女のプライドと言うものが、そうしてくれるであろうことを、ほんのわずかながら期待していた・・・。
予想は外れてくれなかった。彼女は、私たちの目の前に現れることなく去っていった。
今まで応援してきたファンに対して、礼を失する態度でこそこそと逃げるように去っていった。
最悪である。これまで自らを支えてきたファンさんに対して真正面から向き合わず、ビデオなんかで謝ってもらっても何の意味もない。たとえそれが自分で決めた事でなかったとしても、逃げたと取られてしまうのは当然の事だ。
「井上裕紀子は、自らの処遇において、事務所に対し不満が欝積していた。だから“イタチの最後っ屁”のつもりで、『制服向上委員会』と言うグループのイメージを壊滅させかねない“SKi在籍中の妊娠”という爆弾を落とした。それに対しコミティサイドは、彼女への仕返しのつもりで、これまでファンさんの中にイメージしてきた“アイドル・井上裕紀子”像をぶち壊すべく、この事実を発表した」と、勘繰られても仕方がない顛末となってしまった。
この下衆の勘繰りが事実だとしたら、共に全くと言っていいほど“ファン”を無視した暴挙としか言いようがない。
この騒動で私が一番がっかりしたことは『井上裕紀子が、もはやプロとしての意識を持ちえていなかった』ということであり、一番憤りを感じるのは『井上裕紀子もPTAコミティも、全くと言っていいほど、ファンの気持ちを考えていない行動に出たこと』である。
撮影/ホーカー・テンペスト
率直に言ってPTAスタッフは「ここまでSKiについてきてくれるファンは、ちょっとやそっとのことでは、もう逃げることはない」と考えているのであろう。
また、かつての吉田未来の退会劇や、田村千秋の脱退劇などと比べると、既に井上裕紀子がグループの一線を退いていたということもあって、SKi本体に与えるダメージ自体は小さいものだろうとスタッフは考えたに違いない。
だからこそ、このスキャンダルを、懐妊という事実を公表する決断を下したのであろう。
だが、“ファンさんに対して誠実な対応を取らず、しこりを残した”と言う意味で、私はこの騒動が小さなものだとは決して思えない。
むしろこの先、『制服向上委員会』が、ライブ・アイドルとしてやっていくのに大きな禍根を残してしまったのではないだろうかと思う。
ファンさん達に対して、すっきりとした形でこの事態のカタをつける事が出来ないのならば、PTAコミティは徹底的にこの事実を隠し通すべきであった。
「後から分かった方がショックが大きい。だから公表してくれて良かった」という者もいるが、それは違うと思う。
後から分かると言うことは、既にSKiをやめてからの私人である“井上裕紀子のプライベート”を調べたと言うことである。このことにより心が傷ついたとしても、それは私人・井上裕紀子のプライバシーという“パンドラの箱”を開けた者の方が悪いのである。
あえてここでは詳しくは書かないことにするが、「井上裕紀子とファンさんとの間で、公人としての井上裕紀子と、私人としての井上裕紀子の区別があやふやになってしまっていたこと」。これがこのスキャンダルのおきた要因の一つではないか。
井上裕紀子に対してとても甘い考え方であるが、おそらく彼女は心のどこかで捨鉢になっていたのではないかと思う。そうでなければ、彼女がこのような最期(そう“最期”だ)を迎えた理由を説明できないではないか。
SKiの中では数少ない、『プロ意識』を持っていたメンバーであった彼女が自滅の道を歩んでしまった原因。ここまで追い込まれてしまった原因を、これからもファンさんを続けるつもりがあるのならば、ひとつ考えてみてほしいと思う。彼女がやった事そのものを、許す・許さないは別にして。
アイドルであった、公人としての井上裕紀子に対して、もう何もいう事はない。
そして、私人・井上裕紀子(おそらく姓は変わっているであろうが)さんに言いたいことは
「ダンナさんと生まれてくる子供を大事にして、達者で暮らせよ」。それだけだ。
それにしてもファンからの熱狂的な支持を得ていた彼女が、このような形でSKiを去っていくなんて、一体誰が想像したであろうか。
かつて、ORENGE☆IDOL誌のライターであった中村氏は「SKiファンは、毎周路面は変化するし、思いがけないことが起きる“モナコグランプリ”を走っているようなものだ」と評したが、今やもうそんなものじゃない。一つルートを外れたら、ちょっとマシンがトラブルを起こしたら、たちまち死につながる“サファリラリー”のようなモノになってしまっていることが、この騒動によって、よーく理解出来た。
結局割りを食ったのは、これまで一生懸命に井上裕紀子を応援してきたファンさんたちである。
(一部のファンさんにとっては“身から出たサビ”であろうが)。
時代が変わり、世の中の空気が変わっていっても、いつだってそうなってしまうのである。金井覚流に言うなら『勝ちの無いゲーム』である。
でも私は、こんなことがあった今も『勝ちの無いゲーム』そして『制服向上委員会ワールド』が、嫌いではない。我ながらおかしなものだと思う。
最後に、笑えない実話を一つ。昨年11月のスポーツ大会でのヒトコマだ。
班分けのための“アミダくじ”が終わり、メンバーが各班のもとへと集まったときに、私が小耳にはさんだ井上裕紀子と久保愛の立ち話…。
久保 「ねえ、石橋貴明と鈴木保奈美との結婚会見、見た?」 井上 「見た見た。もったいないよねぇ」。 久保 「どっちがもったいない?」 井上 「鈴木保奈美の方に決まってるじゃない!」 久保・井上 「ねぇーっ!」
私がこの会話を聞いた時には別に何も感じなかった。だが、今にして思うと、この会話にはすごく恐ろしい意味を含んでいたような気がしてならない…。
(BW)