こまばへの道


あなたがいるから ここにいる(2)

 私が初期のSKiに、これ程までに惹かれたのは、いま考えてみると、彼女たちが少しも〈アイドル〉らしくなかったから。なのかもしれない。私は〈アイドル〉というフォーマット自体には、何の思い入れもない人間で、初期のSKiに興味を持ったのも、結局はMCまで管理されたガチガチの演出だけだった。1年足らず見続けたところで、私はいわゆるアイドルマニアの人たちとは“人種”も異なり、根本から見方も違っているのにはっきりと気づいてしまった。私と同タイプの人々の多くが、会場から姿を消してしまった翌年以降、客席の中でかなりの違和感を感じ始めたことや、メンバーのうちで一番アイドルっぽくなかった前田厚子が好きになったことの理由も、今になってみると全部よくわかる。

 それにしても当時、なぜあれ程までに“管理”された姿を、“美しい”と感じてしまったのか。これも今にしてみれば、虚飾も自己主張も何もないピュアな世界をそこに見ていたから、ということになるかと思う。それはまさに「命じられたとおりに出来るかどうか」だけがテーマの〈学芸会〉の世界だったのだ。

 さて、話を元に戻そう。芝青年館の頃は、まだ客席も静かなもので、ステージにもほどよい緊張感が漂っていた。その頃、SKiを評して、あるミニコミは「箱庭のお嬢様といった感じで…」と書いていたが、確かに初期のメンバー全体には、そんな雰囲気が感じられた。メンバー同志の交流もまだそれほど深まっていなかったようで、例えば滝本久美が、白石桃子に「久美ちゃんは…(性格が)ちょっと暗いかな。」と言われて、表情をこわばらせる。なんて場面も見られたりした。

 少々、話は落ちるのだが、その頃のメンバーは、ステージにまだ慣れていなかったせいか、短いスカートの制服でイスとかに座る時でも、やたら足を広げて座るもんだから、けっこう目のやり場に困った(笑)。でも、よく見ると{←よく見てはイケナイのだが…(笑)} 全員、下にはブルマをはいていたようだった。しかし、なぜブルマなんだ? アイドルなら、アイドルらしくフリフリのアンダースコートみたいなヤツを、はけばいいじゃないか…。と考えかけたところで、「そうか、〈制服〉だから、下も〈ブルマ〉なのか!」と気づき、私は思わず苦笑いしてしまった。

 また、初期のコンサートでは、必ずアンケートが実施されていた。好きなメンバーや曲、意見・感想を書く欄があって、他人が書いているのを のぞき見するのも、なかなか楽しかった。ちなみに、芝でやっていた当時は『恋』,『なかよし』など、割合スローテンポの曲が人気だった。メンバーでは、望月・宮本・吉成の人気が高く、それに秋山・藍田・奥山などが続いていた(8月以降は、吉田・滝本人気が、急激に高まったようだった)。意見としては、「初心を忘れないでください。」,「くだけすぎでは?」,「新宿{バーニーズ・ニューヨーク}でやっていた頃の方が良かった。」などの内容が、そろそろ出始めていた。

 そして、私自身の“推し”メンバーが決まったのも、ちょうどその頃だった。私の場合の1推しは前田、2推しは秋山。もともと、長身・細身の“お姉さん系”が好みだったこともあるが、それ以上に彼女たちの普通っぽさが好きだった。しかし、秋山はともかく、前田は不思議なくらい人気がなくて、並みいる愚連も 外道の方々も、こと前田に関しては、全くといってよいほど無関心の様子だった。

 やがて、夏がやって来た。この時すでに、私は完全に狂っていた(笑)。この年の7〜8月などは、毎日のようにコンサートがあったため、有給休暇も全部使うハメになり、ボーナスも全部お布施(笑)することになってしまった。もう、私の生活は完全にSKi中心になっていた。

(これで終わるつもりだったのだが、まだ続いてしまうかもしれない…。)

[東京都/桂木 明]


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