★〈ムーンライトながら〉について
〔青春18きっぷ〕や普通乗車券だけで、事前に予約をしなくても気軽に利用できた、〈大垣夜行 (人によっては、[垣鈍(がきどん)],[垣夜(がきや)])とも言う。〉375Mレ,372Mレ(レは、列車の意)は、みなさんも一度は乗車されたことがあると思うが、さる3月16日のダイヤ改正から、一部区間全車指定席の〈ムーンライトながら〉へと変身した。
この列車の昭和40年代以降の歴史と、今回生まれ変わった経緯を紹介しよう。東京〜大阪間を走っていた普通客車列車の143レ,144レは、1967(S43)年10月改正で廃止される予定だったが、当時の国鉄総裁に存続を求める投書が多く寄せられ、新聞の読者投稿欄にも、同じような内容が多く掲載されていたほどである。こうして、143レ,144レは電車化され、列車番号も143Mレ,144Mレとなり、運転区間が大垣までと短縮されたものの、急行列車の間合い運用で、当時 東海型電車と呼ばれていた 153系電車が充てられた。その後、列車番号は347Mレ,344Mレに変わり、345Mレ,340Mレを経て、現在の375Mレ,372Mレとなる。また車両は、東海道・山陽本線で主力列車として活躍してきた153系電車が老朽化したため、1982(S57)年11月改正で165系電車に置き換えられた。
あまり大きな変化のなかった 375Mレ,372Mレだったが、今度は165系電車の老朽化が進んだため、急行〈東海〉が特急化されることになり、これと共通運用を組んでいた〈大垣夜行〉の行く末が、鉄道ファンの間で話題となった。全車指定席の列車になるのか? それとも165系電車のまま存置されるのか?
結果は、前者であった。昨秋の、身延線急行〈富士川 {静岡〜富士〜甲府}〉の特急化に際して投入された 373系特急型電車が量産され、これに置き換えられた。なお、列車番号は変更されなかった。
以前のように始発駅で長時間並ばなくても、500円(閑散期は300円)さえ払えば自分の座席は確保できるので、遅くまで仕事や用事があっても、発車間際に安心して乗車駅へ行けるようになったのは、嬉しいサービスである。{しろくま より:他の指定席車連結の快速列車〈ミッドナイト〉〈マリンライナー〉〈SLやまぐち〉〈ムーンライト山陽〉などと 同様に、普通乗車券・回数乗車券・周遊券・[青春18きっぷ]などでは、座席指定券を買えば乗車できるが、定期乗車券では原則として乗車不可(ただし、上り〈ムーンライトながら〉大垣→熱海間 など、一部例外あり)なので、別途に乗車券が必要となる。}
しかし、これとは裏腹に、目玉商品とも言える〔グリーン車(旧1等車)〕が、廃止されてしまった。夜行列車に不可欠のサービス{例えば、フル・リクライニングシートや夜間の車内減光}が充実していただけに、残念でならない。
とくに下り列車は、始発駅で定員になり次第、グリーン券の発売を中止しており、車内でも発売しなかったので、混雑時は払い戻しの客が出るほどの人気があった。快速〈ムーンライトながら〉は、[青春18きっぷ]{しろくま より:春・夏・冬の学生の休み期間に合わせて年3回発売され、学生以外にも子供から主婦・お年寄りまでが利用する、人気の乗車券で 11300円。1日券の5枚綴りで定着していたが、この春からJRグループ各社が、金券屋などでのバラ売り防止と、本来普通乗車券を買うべき客まで利用されたことによる収入減少対策として、1券片で1日づつ5回乗車(連続でもよい)できるように変更(改悪)された。これにより、1人が1日だけ乗車する場合や、友人同志でまとめ買いしておいて、同じ日にに別々の方向へ旅行(例えば、東京から 九州と東北へ)するような使い方は、出来なくなった。}の発売時期になると、指定券があっという間に売り切れてしまうので、発売開始となる1ヶ月前の同じ日に購入したほうが無難である。全車指定席となる区間は、下りが東京→小田原間,上りが大垣→熱海間で、これより先は9両編成のうち、東京方3両(多客期の下りは6両)が自由席として開放され、下り列車は名古屋から終着の大垣まで全車自由席となる。なぜかというと、下り 375Mレは小田原以西への最終列車として機能しており、豊橋あたりからは始発列車も兼ねている。みどりの窓口で指定券を買おうとして、もしも運悪く 満席だった場合は、一部指定席区間の始まる「小田原(上りは熱海)まで」と言い直せば、座席の取れる確率が高くなるので、オススメだ。
そして、多客期には〈ながら〉の指定券が取れなかった客のために、全車自由席の臨時列車 9375Mレ,9372Mレが、165系電車を使って運転されている(はじめから165系電車を目当てに、乗車する人もいるが…)。
なお、下りの9375Mレは、品川からの発車(23:55発)なので、要注意。下りの〈ながら〉は、蒲郡,岡崎あたりから早朝通勤・通学客が乗ってくるため、[青春18きっぷ]の使える時期は非常に混雑するが、名古屋で新幹線〈ひかり61号(6:21発,広島ゆき)〉乗り換え客が下車するため、車内は空席が出来るほど空いてくる。このため、名古屋で東京方の3両を切り離し{この車両は、1190Mレ〈ホームライナー豊橋2号〉に使用されたあと、飯田線の特急〈伊那路1号〉の運用に就く。}、先に述べたとおり、全車自由席の6両編成となって、終着の大垣(1番線)には6:51に到着する。このとき 大半の客が、11分の乗り換えで 431Mレ加古川(土・休日は上郡)ゆき(7:02発)に乗車するため、ドアが開くと同時に隣りの2番線ホームを目指して、跨線橋の階段を一斉に駆け上がる(俗に“大垣走り”と呼ばれている)。
一方、上り列車は、新幹線の乗り換え駅である 名古屋からの乗客が多いのが、日常茶飯事で、大垣→熱海間は定期券でも、座席指定券を持っていれば乗車できるが、JR東日本のエリアとなる熱海以東を、一部自由席として開放したそもそもの理由は、始発列車を兼ねており、とくに築地への買い出し客が、卸売市場ゆきの都営バスと接続している新橋まで、毎朝乗車しているため、そのつど料金を徴収していると、面倒だからである。終着の東京着は、4:42で、ここでは総武線・501Fレ 快速〈エアポート成田〉成田空港ゆき(5:02発),京葉線・蘇我ゆき(4:57発)に接続している。また、京浜東北線北行・大宮ゆき,山手線内回り(どちらも4:44発)に乗り継げば、上野で 宇都宮線・521Mレ 黒磯ゆき,常磐線・321Mレ いわき ゆき,高崎線・821Mレ 高崎ゆきの、各始発列車に接続しています。
いつも、東海道線の往来に新幹線ばかり使っている方も、たまにはのんびりとした“夜行列車”の旅はいかがでしょうか。こんどの《SKiワースト・ツァー》を観に行くときにでも…。これを読んで、少しでも参考となれば、うれしいです。
[東京都/森 敏英]
▲しろくま より:《こちら新宿3丁目》の vol.3〈稔の旅日記〉の文中に登場した、〈大垣夜行〉と〈ムーンライトながら〉に関する解説文が届きましたので、ご紹介しました。私も、何度か乗車したことがありますが、165系の“夜汽車の雰囲気”はなかなかいいもんです。バスと違って、車内が広々としているのがいい。それに、[18]の期間中なら、バスよりも安いし…。373系〈ながら〉にも乗りましたが、定員乗車なので車内は静かだし、リクライニングシートだから、ぐっすりと眠ることができました(バスは、うたた寝しかできない)。書き忘れましたけど、下りの場合、名古屋で〈ながら〉から臨時〈大垣夜行〉に乗り換えれば、大垣駅でラクできます。そして、個人的な話ですが、米原駅のホームで買った 900円の「牛肉弁当」を、快速電車の車内で食べながら“篠原”駅を通るのが、私のいつもの楽しみです。当列車では、鉄道にアイドル・ネタを織り交ぜた、読んでたのしい投稿をお待ちしています。なお、当列車は不定期運転につき、スジ(紙面)に余裕のある場合にのみ運転します(もうすぐ、季節列車に格上げか?)ので、あしからずご了承ください。みなさまのご乗車を、心よりお待ちしています。
[専務車掌・しろくま]
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